営業マインド

紹介を依頼することになぜ抵抗を感じるのか

なかなか紹介がもらえないんです…

生命保険会社のマネージャー時代、新人研修の講師役をよくやらされました。

そこで出会う多くの新人営業マンが抱えている悩みが「これ」でした。

一方、紹介をもらいながら高い業績を上げている新人もいます。

一見、紹介をもらえる営業と、もらえない営業がいるようですが実は違います。

正しくは「紹介をもらう営業」と「もらわない営業」がいる、です。

つまり、紹介がもらえないのではなく、正々堂々と紹介が依頼できないということです。

なぜ、紹介を依頼できないのか。

実は、そういった営業マンは、ある共通の思い違いをしています。

それを明らかにするために、「なぜ紹介がもらえないのか」ではなく、「なぜ紹介を依頼することに抵抗があるのか」について考えてみましょう。

この思い違いに気づくことができれば、紹介に対する認識が変わるはずです。

紹介営業とはどういうものなのか

本題に入る前に、紹介営業とは何か、について考えてみましょう。

見込客を作るための手法には、飛び込みや電話営業、セミナーやSNSなどによる集客、広告やDMなど様々なものがあります。

ただ、紹介もその中のひとつの手法に過ぎない、と考えているとしたら、それはちょっと違います。

実は、紹介で営業できるというのは、単に営業成績を上げる以上の意味があるのです。

少し、視点を変えてみましょう。

「紹介をもらう」とは、人に頼みごとを承諾してもらう行為です。

すなわち、これは「人を動かす力」に他なりません。

高い実績を挙げている営業マンのほとんどは、紹介を軸に営業をしていますが、彼らには「人を動かす力」がある、ということなのです。

営業に限らず、何かを成し遂げるには誰かの力を借りる必要があります。

それを考えると、この力を身につけておくことは、どのような仕事であっても非常に重要なことではないかと個人的には思っています。

なぜ紹介依頼に抵抗を感じるのか

ところで、なぜ紹介を依頼することに抵抗があるのでしょうか。

ここでは、その理由を2つ挙げてみましょう。

  • 5つの社会的な脅威
  • 他人に頼るべきではないという価値観

 

5つの社会的な脅威

コンサルタントのデイビット・ロックという人が、ネガティブな結果を引き起こす社会的な脅威として5つを挙げています

脅威とは、裏を返せば「欲求」ということになります。

その5つとは

  1. ステイタスへの脅威
  2. 確実性への脅威
  3. 自律性への脅威
  4. 関係性への脅威
  5. 公平性への脅威

 

「ステイタス」とは、他者との比較のことで、まわりから自分はどれくらい尊重されているかという認識のことです。

「確実性」は、これから何が起こるかを予測したい、という欲求。

「自律性」は、物事を自分の意思でコントロールしたいという欲求。

「関係性」は、社会や集団への帰属意識や仲間意識。

「公平性」は、文字どおり公平に扱われることを求めることです。

確かに、どれも人が強く持っている欲求でもあり脅威でもあります。

では、紹介を依頼するという行為を考えてみましょう。

もし、紹介を依頼して断られたとしたら、ステイタスは保たれず、自尊心は傷つきます。

しかも、かならず紹介してくれるという確実性はなく、さらに断られた場合、それを受け入れなければならないので自律性も感じられません。

また、断られたのは紹介依頼なのに、自分自身を拒絶されたように感じるため、関係性が脅かされたように感じます。

そして、イエスかノーかは相手次第なので、公平性も感じられません。

つまり、紹介を依頼するという行為は、この5つの社会的苦痛をすべて味わう可能性があるわけです。

その結果、そんな苦い経験をするくらいなら、依頼しない方がマシだ、となってしまうのです。

他人に頼るべきではないという価値観

この社会的脅威以外にも、紹介依頼を躊躇させる要因があります。

それは「価値観」です。

僕たちは、子どものころから「自分のことは自分で解決しなさい」と言われ続けてきました。

そのため、心のどこかに「安易に人を頼りにすることは良くないこと、情けないこと」という価値観を持っています。

それが、紹介を依頼するときに、気まずさや恥ずかしさを生じさせてしまうのです。

さらに、この価値観が強くなると、おかしなことが起こります。

それは、紹介を断られたときだけでなく、紹介をもらえたときにも、自分がみじめで情けない人間のように感じてしまうのです。

ここまでいくと、余程の事態にならないかぎり、紹介を依頼することはなくなってしまいます。

紹介依頼に対する2つの思い込み

紹介を依頼することに抵抗を感じる理由として、「社会的脅威」と「価値観」を挙げました。

これらは、紹介依頼を躊躇させる要因になるのですが、実はそれだけではありません。

もっともらしい「思い込み」も生み出してしまいます。

それは、

  1. 紹介は断られる可能性が高い
  2. 紹介を依頼すると嫌われる

「え、実際にそうじゃん?」と思ったかもしれません。

しかし、これが思い込みであることは、紹介で成功している営業マンに尋ねてみるとわかると思います。

実は、紹介を依頼できる営業マンは、「社会的脅威」をそれほど感じていません。

また、紹介に対して情けなさや、みじめさを感じるような「価値観」も持ち合わせてはいないのです。

それには理由があります。

紹介は断られる可能性が高い

紹介営業で成功している人は、単純に「紹介はもらえるもの」と思っています。

一方、紹介にメンタルブロックのある人は、そうは思っていません。

この違いは何によるものでしょうか。

それは紹介依頼に対する「成功期待感」です。

「人に頼む技術」という本に、アメリカの学者が14,000人以上を調査したおもしろい研究データが紹介されています。

それによると、人は見知らぬ人に頼みごとをするとき、それを引き受けてもらえる確率を、実際よりも平均48%も低く見積もる、のだとか。

ちなみに、48%というのはすごい数字です。

なぜなら、これは「思っている2倍は紹介をもらえる」ということを意味しているからです。

これが現実だとすると、驚くほど大きなギャップです。

もし、それを勝手に低く見積もって、紹介を依頼することを躊躇してるとしたら、これほど不幸な話はありません。

紹介を依頼すると嫌がられる

これは、完全な思い違いです。

確かに、紹介を依頼しても断る人もいますし、場合によって不快な反応を示す人もいます。

でも、これは「そういう人もいる」というだけの話です。

僕の営業所にいた某トップ営業マンなどは、紹介を拒否されて帰ってきたとき、「今日、珍しい奴に会ったわ」と言って、その人を希少部位呼ばわりしてました(汗)

紹介をくれなかった人ではなく、実際に紹介をくれた人に意識を向けましょう。

実は、「紹介は嫌がられる」と思い込んでいる営業マンが、ひとつ見落としていることがあります。

それは、人には「他人に頼るべきではない」という価値観もありますが、それとは裏腹に「人を助ける善人でありたい」という価値観も持っているという点です。

つまり、多くの人は、助けるだけの正当な理由があれば、積極的に助けたいと思っているのです。

頼み方さえ間違っていなければ、ちゃんと紹介はもらえます。

そもそも営業という仕事は、新たな価値を提供したり、問題を解決したりする仕事です。

もし、紹介は嫌がられるもの、という思い込みをしているとしたら、そこがブレている可能性があります。

押さえておくべきポイント

「紹介入手に王道はない」

これは、生命保険会社にいたときにさんざん聞かされたフレーズです。

確かに、「これをやれば紹介がバンバンもらえる!」といった魔法の手法はありません。

とはいっても、ここは押さえておくべきだ、というポイントはいくつかあります。

ここでは4つ挙げてみます。

  1. 紹介を必要としていることを伝える
  2. なぜあなたに依頼するのかを伝える
  3. 誰を紹介してもらいたいのかを伝える
  4. 相手の不安を解消する

紹介を必要としていることを伝える

いきなりですけど、あなたが紹介を必要としていることを、誰が知っているでしょうか?

おそらく、誰も知らないはずです。

何が言いたいのかというと、紹介を依頼しなければ、あなたが紹介を必要としていることを誰にも気づいてもらえない、ということです。

そんなこと言わなくてもわかってるはずだ、というのは単なるエゴです。

人には誰かを助けたいという欲求はありますが、誰がどんな助けを求めているかがわからなければ手を差し伸べてはくれません。

これは、非常に重要なポイントです。

とにかく、自分は紹介を必要としている、ということを明確に伝えるようにしましょう。

たとえ、その時は紹介がもらえなくても、それを知ってもらうだけでも大きな価値があるということは、あとあとわかると思います。

なぜあなたに依頼するのかを伝える

「傍観者効果」というものがあります。

これは、助けを求めている人がいても、「きっと誰かが助けるだろう」と思い、行動しない現象です。

得てして人は傍観者になりがちです。

これは、紹介を依頼するときにも起こります。

つまり、自分が紹介しなくても、どこかの誰かが紹介するだろう、と思われてしまうのです。

これを避けるには、その人を「その他大勢の一人」にしないことです。

そのためには、あなただからこそお願いしている、という理由が必要です。

誰を紹介してもらいたいのかを伝える

「誰でもいいから紹介してください」は、紹介の成功率を思いっきり下げます。

どうみても、営業マンの飢えた感がもろに出ています。

また、依頼された方も誰を紹介したらいいのか、さっぱり思いつきません。

どんな人を紹介してもらいたいのか、その理由は何か、をある程度イメージして依頼するようにしましょう。

むずかしく考える必要はありません。

たとえば、以下は僕が保険の営業マン時代に使っていたトークです。

 

保険営業マン
保険営業マン
お知り合いにニシムラっていう名前の人はいませんか?
見込客
見込客
いますけど、どうしてですか?
保険営業マン
保険営業マン
僕のお客さんにダントツに多い苗字で相性バッチリなんです。ぜひ紹介してください!

「なにこれ」と思ったかもしれませんが、びっくりするほどの成功率でした。

相手の不安を解消する

営業マンに誰かを紹介するとき、かならず不安になることがあります。

それは、紹介をしたことが原因で人間関係がおかしくならないか、という不安です。

ここは、できるだけ払拭しておく必要があります。

もし会えたら、どんなスタンスで会うのか、どんな話をするのか、それをちゃんと伝えることはとても重要です。

仕事観がスタンスを決める

最後に、紹介を依頼する際の「スタンス」について触れておきましょう。

紹介をもらうためには、人間としての魅力が必要だ、という人が結構います。

こう言われると、「そりゃそうだ」と納得しそうになりますが、でも魅力的だから紹介してくれるわけではない、と僕は思っています。

それよりも大切なのは、「どんな仕事観を持っているか」ではないかと思うのです。

仕事観とは、自分は営業マンとして、どんな人の役に立ちたいのか、どんな貢献がしたいのか、という価値観のことです。

営業マンとしての存在意義、あるいはミッションといってもいいかもしれません。

それを感じ取ってくれた人が、力を貸してくれるのだと思うのです。

ちなみに、ミッションに大きいも小さいもありません。

自分ができる範囲で考えればいいと思います。

一度立ち止まって、自分の仕事観について考えてみてはどうでしょうか。

まとめ

前職の生命保険会社では、新人の育成が重要な仕事でした。

右も左もわからない新人に、密接に関わり細かなサポートをしていくのですが、あるタイミングで彼らを手放しひとり立ちさせます。

そのタイミングとは、自分の仕事は売ることではなく、紹介をいただくことだ、ということが腑に落ちたときです。

ただ、業種、業態によっては紹介以外の手法がメインといったところも多いと思います。

それを、紹介をメインに変えよう、という話ではありません。

しかし、どのような手法であっても、そこで出会った人から紹介によって新たなマーケットを展開できれば、営業の幅が大きく広がります。

そのためにも、紹介営業のスキルは、ぜひ身につけておきたいところです。

もし、紹介を依頼することに抵抗を感じるなら、まず、紹介に対する認識を変えてみましょう。

それができれば、営業に対する考え方も根本から変わると思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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