営業スキル

商談時間でわかる、デキる営業、残念な営業

「半年後、君たちは間違いなく売れなくなる」

これは、スカウトされた外資系生命保険会社の入社式で、営業本部長の一人が僕たち新人に向かって言い放った言葉です。

遠い昔の話ですが、かなり衝撃的だったので今だに覚えています。

本部長は、このあと、こう続けました。

「そのとき、2つのことを確認しろ。1つは情熱を失っていないか、もう1つは商談が長くなっていないか、だ」

1つ目の情熱云々の精神論はさておき、今回、取り上げたいのは、2つ目の「商談が長くなっていないか」という点です。

実は、デキる営業マンは、「短時間」、かつ「短距離」で成約に至っています。

一方で、残念な営業マンは、「長時間」、かつ「長距離」で、結局決まらずというパターンになりがちです。

商談時間を短くしようと意識するだけで、さまざまな問題を解決することが可能です。

今回は、あまり取り上げられることのない「商談時間」について考えてみましょう。

「商談時間が長い」のデメリット

「商談時間が長いのはマズいんですか?」

この質問は、「カップヌードルは3分以上経って食べるとマズいんですか?」という質問と変わりません。

つまり、どう考えても、マズいです。

なぜマズいかというと、成約率が落ちる、からです。

理由は、以下の通り。

  • 見込客の集中力が続かない(疲れてしまう)
  • 商談が薄味になってしまう(論点がボケてしまう)
  • 次のアポイントが取りにくい(また時間を取られるのはイヤ)
  • 途中で邪魔が入りやすい(商談に水を差される)
  • ヒマな営業マンと思われる(任せるのは不安)

逆にメリットがあるのか、というと、おそらく「ない」です。

では、適正な商談時間は、いったいどれくらいなのか?と言われると、特に基準があるわけではありません。

しかし、Time is Money(時は金なり)です。

貴重な時間をいただいているわけですから、できるだけ早く目的を果たすのは、営業マンとして最低限のマナーです。

では、なぜ商談が長くなってしまうのか、それを考えてみましょう。

商談が長い=無駄が多い

商談が長くなる理由は単純です。

それは、無駄が多い ということ。

では、よくありがちな無駄を挙げてみましょう。

  • 無駄な話が多い
  • 無駄な話を聞き続けている
  • 無駄な説明をしている
  • 無駄な質問に答えている
  • 無駄な言い回しが多い

無駄な話が多い

無駄な話の代表的なものは、本題とは関係ない、いわゆる「雑談」です。

雑談には、場の緊張を緩めたり、ひと呼吸置いたり、など、クッション的な効果があります。

しかし、無駄に長くなったり、やたらと本題から脱線してしまうと、商談の精度が下がってしまいます。

特に注意が必要なのが、実は「自分の話」です。

話が長い人に共通点は、自分の話が多いことではないかと僕は思っています。

「自分の話」は話す方は気持ちよくても、聞き手にとってはまあまあ苦痛です。

基本的に人は他人に興味ありません。

まして、相手が営業マンならなおさらです。

この背景には、巷でよく聞く「営業とは自分を売り込むこと!」という教えがあるようです。

しかし、これは間違っています。

なぜなら、自分は売り込むものではなく、買ってもらうものだからです。

無駄な話を聞き続けている

マネージャー
マネージャー
えらい長い商談やったなあ
営業マン
営業マン
はい、子供さんの話で、むっちゃ盛り上がって…

マネージャー時代、こんな話は5万回聞かされました。

しかし、その後、「成約になりました」という報告は、ほとんど受けたことがありません。

昨今、「話すよりも聞け」と盛んに言われるようになりました。

中には、「9割は見込客に話をさせろ」などという、神業レベルの要求をする本などもあります。

確かに、見込客の話をよく聞くことは非常に重要です。

とはいっても、関係ない話を延々と聞き続ける必要はまったくありません。

実は、見込客の中には、営業されないようにわざと話を逸らす人がいます。

これに乗ってしまうと、商談自体が制御不能になり、最終的には「宴もたけなわですが、ぼちぼちお開きということで、」と宣告されるのがオチです。

こうなってしまう背景には、営業マンのある思い違いがあります。

それは、人間関係ができれば買ってもらえる」です。

なので、見込客の話を一生懸命に盛り上げて人間関係を作ろうとするのです。

しかし、話が盛り上がったからといって、人間関係が構築できるわけではありません。

もし仮に、人間関係ができたとしても、買ってくれるかどうかは別の話です。

実際、高額な商品になると、それだけで買ってくれることはまずありません。

他の記事にも書きましたが、ビジネスに必要な関係性は、「人間関係」ではなく、「信頼関係」です。

見込客の雑談が長くなってきたら、頃合いを見計らい、次のひと言でとっとと本題に話を戻しましょう。

「ところで…」

無駄な説明をしている

商談では、さまざまな説明をしなければなりません。

新人の頃は、知識や経験が少ないので、あっという間に商談が終わってしまった、ということが多いと思います。

逆に、キャリアが長くなってくると無駄な説明が多くなってきます。

その背景には、2つの理由があります。

  • 自分を認めてもらいたいという承認欲求
  • 詳しい=わかりやすい、という勘違い

まず、承認欲求から。

知識や経験が増えてくると、それをアピールしたい、という衝動に駆られます。

「あんた、スゴい営業マンね!」と、認めてもらいたいのです。

しかし、営業マンは自分が話したいことではなく、見込客が聞きたいことを話すべきです。

主役はあくまでも見込客です。

「能ある鷹は爪を隠す」というスタンスは、営業マンにも必要なのです。

次に、詳しい=わかりやすい、という勘違い。

多くの営業マンが、説明は詳しければ詳しいほど理解してもらいやすい、という勘違いをしています。

現実は、まったく逆です。

この勘違いをしている営業マンは、やたらと専門的な話や枝葉の話が多いのが特徴です。

当然、説明は長くなってしまいます。

残念ながら、見込客はそうした説明にほとんど関心がありません。

わかりやすい説明とは、不必要なものを排除した、無駄のない説明のことだと認識しておきましょう。

無駄な質問に答えている

商談では、見込客がさまざまな質問をしてきます。

営業マンの多くは、その質問を「反対している」、「疑っている」と否定的に受け取りがちです。

そのため、必死に答えようとしてしまうのです。

しかし、あまりにも必死に答えると余計に怪しく思われます。

実は、すべての質問に真面目に答える必要はないのです。

というのも、質問には、ただ聞いてみただけ、ちょっとした冷やかし、あるいは的外れなものなんかが混じっているからです。

質問を受けたときには、まずその真意をつかむことです。

それがわからないときは、「と、言いますと?」とか、「もう一度お願いします」という質問を返してみましょう。

どうでもいい質問のときは、「いえ、大丈夫です」と言ってくるはずです。

次に注意が必要なのは、プレゼンなどで説明している最中に質問された場合です。

その場合は、「そうですね、それについては、あとで説明しますね」と、スルーしてしまいましょう。

なぜなら、商談のペースが乱れてしまうからです。

また、質問に対して「待ってました!」とばかりに、張り切って説明をする営業マンがいますが、これまたNGです。

皆さんも、ちょっと質問しただけなのに、やたらと詳しい説明をされて「しまった」と思った経験はあるはずです。

営業マンA君
営業マンA君
阪急の北千里線って淡路駅で乗り換えやんな
営業マンB君
営業マンB君
そうよ。ところで淡路駅って1番ホームがないの知ってた?
営業マンA君
営業マンA君
知らん(アカン、地雷踏んでもうた…)

無駄な言い回しが多い

見込客に恐れを感じていると、単刀直入な言い方ができず、回りくどい言い回しになりがちです。

このタイプの営業マンは、なかなか本題に入れないクロージングが怖い、という合併症を併発している可能性も大です。

いずれにしても、商談が長くなる要因になっています。

これは、断られることを必要以上に恐れている、ことが原因です。

そのため、見込客の顔色を気にしすぎて、はっきりとしない言い回しが増えてしまうのです。

これを解決するには、見込客に対するスタンスを高くする以外に方法はありません。

まず、自分の営業スタンスを見直してみましょう。

無駄を生み出す根本的な要因

こうした無駄が多くなってしまう根本的な要因は、大きく2つあります。

  • 商談の「目的と手段」があいまい
  • 見込客に対するスタンスが低い

商談の「目的と手段」があいまい

商談の各プロセスには、かならず「ここまでもっていく」という着地点が必要です。

それが、商談の目的になります。

一方、着地点までもっていくためには、商談のシナリオが必要になります。

それが手段です。

しかし、そのどちらもぼんやりしたまま商談に臨んでしまう営業マンが大勢います。

彼らの口癖は「一応」「とりあえず」です。

マネージャー
マネージャー
今日は、確かプレゼンやったな?
営業マン
営業マン
はい、一応プレゼンなんで、とりあえずプランを見てもらおうかなと思ってます

着地点ががあいまいだと、商談時間そのものに対する意識も希薄になってしまいます。

見込客に対するスタンスが低い

商談の目的と手段があっても、それだけで商談時間をコントロールすることはできません。

短時間、かつ短距離で着地点までもっていくには、見込客を積極的にリードする必要があります。

そのためには、商談のイニシアティブを営業マンが握っていなければなりません。

しかし、見込客に対するスタンスが低いと、イニシアティブを取られてしまい、話が本題から逸れたり、無駄な話が多くなってしまったりするのです。

まずは商談時間を決める

まず、商談の精度を落とさずに、時間を短縮できないかを考えてみましょう。

たとえば、普段1時間くらいかかっているなら、それを30分にすると決め、その方法を考えてみるのです。

そのままでは、時間内に収まらないので、必然的に商談の内容やシナリオを精査することになるはずです。

ここで、問われるのが「商談の設計力」です。

商談が長くなりがちな営業マンは、論点が定まっていないことが多いのですが、短い時間内で収めようと試みることで、それをはっきりさせることができます。

商談時間と目的を宣告する

実際の商談に臨んだら、まず冒頭に、商談の目的と流れ、商談時間を見込客に伝えてしまいましょう。

つまり、スタートからゴールまでの経路と所要時間を宣告してしまうのです。

今日、お伝えしたいことは2つだけです。ひとつは「生命保険のしくみ」、もうひとつは「生命保険の考え方」です。終わりましたら、○○さんのお考えを聞かせて頂きたいと思っています。20分ほどで終わりますので、よろしくお願いします。

自分から商談時間を宣告すると、さすがにそれを意識せざるを得なくなり、無駄が排除される可能性が高くなります。

また、単に商談時間を短くすること以外にも意味があります。

なぜなら、見込客は、商談時間や内容、着地点がわからないことを、不安に思っているからです。

それを最初に伝えておくことで、不安を解消してもらえます。

 

まとめ

優秀な営業マンの商談には、本当に無駄がありません。

たとえ雑談であっても、緻密に計算しながら行っています。

彼らは、常に成約に至るまでの最短ルートを探りながら商談をしているからです。

普段、あまり意識することのない商談時間ですが、実は、非常に重要なポイントなのです。

商談が長い=無駄が多い

  • 無駄な話が多い
  • 無駄な話を聞き続けている
  • 無駄な説明をしている
  • 無駄な質問に答えている
  • 無駄な言い回しが多い
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