もっとアタマを使ったらどうなん。
(いや、考えたんやけど…)
こんな経験、ありませんか?(どっちの立場だったか知りませんが)
ところで、この「頭を使え」とは、具体的にどういうことなのでしょうか。
「頭を使う」には、その前提として「問い」が必要です。
つまり、「頭を使う」とは、
「問い」を立てる →「答え」を出す
という一連のプロセスのことです。
事実、仕事の成果はすべて「どんな問いに、どんな答えを出したか」の結果です。
もし、仕事が上手くいかないというのであれば、ここに問題があるのかもしれません。
では、どうすれば正しい問いを立て、正しい答えが導き出せるのでしょうか。
そのポイントになるのが、「視点」「視野」「視座」です。
なぜなら、すべては「何がどう見えているか」によって決まってくるからです。
Contents
視点・視野・視座とは
まず、「視点」「視野」「視座」の関係を整理しておきましょう。
ここで、ポイントになるが、どこから見ているのか、という「視座」です。
なぜなら、「視座」を変えずに、視野を広げたり、視点を動かしたりするのはむずかしいからです。
「視座」が違うと、同じものが、円柱にも、丸にも、四角にも見えます。
そのため、話が噛み合わないとか、理解し合えないといったことも頻発します。
つまり、仕事においては、
「自分はどこから見ているのか?」
「相手はどこから見てるのか?」
を問うことが、非常に重要になるのです。
視座を変えるとは
視座は、「高い」とか「低い」という言い方をします。
これをイメージしやすいように、ピラミッドを使ってみましょう。
視座を下げる
ピラミッドの下辺には、数多くの「現象」や「事象」が、具体的に目に見える形で広がっています。
ただし、この位置にいる人には、その一部しか見えていません。
そのため、それぞれの「つながり」や「関係性」がはっきりとはわかりません。
また、意識も「現在」に固定しがちになります。
視座を上げる
一方、視座を上げてピラミッドの頂点に向かうと、「本質」や「概念」といった、抽象的なフィールドに変わっていきます。
本質や概念は、数多くの現象、具象からエッセンスを取り出したものなので、数は少なくなっていきます。
この位置にいる人は視野が広く、ものごとの全体が見えています。
そのため、個々の現象や事象の、「つながり」や「関係性」がわかりやすく、また「長期的」な観点に立って考えることが可能になります。
視座を上下に動かす
視座を上げて、「本質」や「概念」を見出しても、それらは抽象的なので、そのままでは行動に移せず、何も生み出すことはできません。
一方、低い視座にとどまったまま、ただ漠然と目の前にある仕事をしても、生産性は上がりません。
つまり、いい仕事をするためには、ピラミッドを登ったり降りたりしながら、視座を動かす必要があるのです。
ただ、現実的には、日々の仕事はすべて具体的なので、「木を見て森を見ず」の状態に陥りがちです。
なので、視座を高くすることを意識する必要があります。
では、もう少し具体的にイメージしできるように、3つの切り口で考えてみましょう。
「本質と現象」
・見込客の視座を上げる
「目的と手段」
・仕事の生産性を上げる
「要約と全容」
・プレゼン力を上げる
本質と現象
見込客の視座を上げる
見込客のニーズには、すでに表面化している具体的なニーズと、まだ隠れている本質的なニーズがあります。
実は、多くの見込客は、「自分が本当は何を望んでいるのか」が、はっきりとはわかっていません。
つまり、視座が低い状態なのです。
そのため、営業マンには、すでに目の前に現れている不満や願望の解決策を求めてきます。
ところが、この表面的な要望に、多くの営業マンが「チャンス」とばかりに飛びつき、商品の売り込みを始めてしまいます。
残念ながら、これはもう”三流以下の御用聞き営業マン”としか言いようがありません。
営業マンの仕事は、商品を売ることではなく、真の問題や課題を発見し、それを解決することです。
そのためには、まず見込客の「視座」を引き上げる必要があります。
ただ、その前に「そもそも生命保険は必要なのか」ということを考えてみましょう!
高い視座から、ものごとを見ることで、見込客は自分の本当の課題や願望に気づくことができるのです。
ただし、それを可能にするためには、営業マン自身が高い視座を持っていることが絶対条件になります。
営業であるなら、常に以下のような問いを持って仕事に取り組むべきです。
- これ の存在理由は何か?
- これ は何を満たすのか?
- これ の本質は何か?
「これ」とは、あなたが売っているもの。
ちなみに、これらの問いに「正解」はありません。
だから、自分で考える必要があるのです。
視座が高くなると、自分が本当は何を売っているのか、その「正体」がわかるはずです。
目的と手段
仕事の生産性を上げる
「目的と手段」を考えて仕事しろ、とよく言われます。
ところが、「何が目的で、何が手段なのか」は、視座の高さによって変ってしまいます。
というのも、目的と手段の関係は相対的なもので、ひとつの目的には、さらに上位の「目的」が存在するからです。
これについては、誰もが一度は聞いたことのある「3人のレンガ職人」の寓話を例に使いましょう。
旅人が汗水たらしてレンガを積んでいる3人の職人に出会います。
「何をしているのですか?」と聞くと、それぞれ次のように答えました。1人目:「見りゃわかるだろ、レンガを積んでいるんだよ!」
2人目:「レンガを積んで”壁”を作ってるんだよ」
3人目:「後世に残る”大聖堂”を作ってるのさ」
ここで、注目してもらいたいのは、「大聖堂を作る」という3人目の職人にとっては、2人目の職人の「壁を作る」という目的が、ひとつの手段にすぎないという点です。
このように、視座が違うと「目的」と「手段」の概念も変わってしまうのです。
視座を上げて、さらに上位の「目的」が何かを考えることで、仕事の方向性が明確になり、必然的に生産性が上がります。
また、「目的」は、モチベーションにも大きく影響します。
この3人のレンガ職人のモチベーションは、おそらくまったく違うはずです。
一方で、視座が下がってしまうと、手段が目的になってしまうことがあります。(手段の目的化)
目的を見失うと、一生懸命に仕事をしているのに、生産性が上がらない、といったことが起こります。
これについては、何かの本にあった、印象的な寓話をご紹介します。
なんの本だったか忘れてしまいましたが、だいたい以下のような話だったと思います。
昔、昔、ある少年が、重い病を患った父親と粗末な小屋に住んでいました。
少年は一生懸命働きましたが、とても薬を買うことはできませでした。ある日、謎の旅人が訪ねてきて、「父親はもうすぐ死ぬ」と予言します。
少年が「父親を助けたい」と懇願すると、旅人は次のように言います。「東の方角に石だらけの海岸がある。そこに病を治す魔法の石がある」
「魔法の石は、手に取ると熱いのですぐにわかる」
少年はすぐに出発し、苦労の末にやっとその海岸にたどり着きます。
そして、旅人のいう”熱い石”を探し始めます。
少年は、一度拾った石を、また拾わないように海に投げ捨てることにしました。
少年は、ひたすら石を拾っては投げ、拾っては投げを繰り返しますが、何ヶ月経っても”熱い石”は見つかりません。
しかし、そんなある日のこと、少年は遂に”熱い石”を拾います。
ところが…
少年は、その”熱い石”を、迷うことなく海に投げ捨ててしまいました。
拾った石を海に投げ捨てるのは、同じ石を拾わないための「手段」でした。
ところが、それを繰り返しているうちに、「目的」になってしまったという話です。
手段の目的化とは、”糸の切れた凧”のように、手段が一人歩きしている状態です。
これは、仕事においてもよく起こります。
どんな仕事であっても、常に「この仕事の目的は何か」という問いを忘れないことです。
プレゼン力を高める
要約と全容
わかりやすい説明をする
説得力のあるプレゼンをする
的確に質問に答える…
そのために必要なのが「要約力」です。
個人的には、「プレゼン力」=「要約力」だと考えています。
「要約力」とは、「ものごとを短く、素早くまとめる力」のこと。
つまり、”情報処理能力” のことです。
「要約力」は、プレゼンにもっとも必要な「わかりやすさ」と「説得力」に直結しています。
ここで必要になるのが、やはり高い視座からものごとを見る力です。
「要約力」をさらに分解すると、以下の3つになります。
- 短くする力
- まとめる力
- 並べる力
❶ 短くする力
短く話す、短く伝える、というのは、簡単そうに聞こえますが、実は結構むずかしいのです。
あなたも、「5分しかないねん」と見込客に言われて、焦ったことがあるかもしれません。
では、どうすれば、短く話す、伝える、ができるのでしょうか。
実は、もっとも効果的なのが、誰もが知っている「箇条書き」です。
箇条書きにするは、
❶要素ごとに分ける
❷情報を圧縮する
という作業が必要になります。
その結果、無駄(不要なもの、重複したもの)が削ぎ落されます。
実際、箇条書きにするだけで、ひとつひとつのネタも、全体の尺も短くなります。
箇条書きにできたら、次に行うことは、これらを「まとめる」ことです。
❷ まとめる力
箇条書きにできたとしても、そのままでは相手に伝わりません。
今度は、それらを「まとめる」、つまり、グルーピングします。
ここで、視座を上げる必要があります。
まず、高い視座から、それらの「関係性」を見てみましょう。
関係性には、「直列」と「並列」の2つがあります。
わかりやすくいうと、直列の関係は、「親」「子」「孫」という縦の関係。
並列の関係は「兄弟」の横の関係になります。
たとえば、「主張(親)」「根拠(子)」「事例(孫)」は直列の縦関係になります。
一方、複数の根拠、事例はそれぞれ並列の横関係になります。
図を見ると、「フーン」という感じだと思いますが、この関係性がよくわからないプレゼンをする人は結構います。
直列、並列の関係で仕分けをすると、情報のレベル感が揃ってきます。
その結果、「幹」と「枝葉」がはっきりとしてくるのです。
これにより、「何を伝えたいのか」と「どう伝えたらいいのか」が見えてきます。
❸ 並べる力
箇条書きにして、それをわかりやすくまとめるだけでも、話は理解してもらえます。
しかし、プレゼンの目的は、相手の感情を動かすこと、です。
理解してもらうだけでは、見込客の感情は動かないのです。
感情を動かす鍵になるのが、プレゼンのストーリー展開、つまり物語性です。
ストーリーは、情報と情報の「つながり」によって生まれます。
パワーポイントであれば、スライドとスライドの「幕間」がストーリーを生むのと同様です。
つまり、情報を、どんな順番で並べるかによってストーリー展開が変わるということです。
ただ、ストーリーは、複雑に考える必要はありません。
「①つかみ」「②本題」「③まとめ」の三部構成で十分です。
箇条書きをしてまとめてきた内容を、いろいろな視点で見てストーリーを練ってみましょう。
ここで重要なのは「つかみ」です。
これは個人的な見解ですが、何を「つかみ」に持ってくるか、それがプレゼンの成功を左右すると思っています。
迷ったときは、「つかみ」=「問題提起」と考えると、アイディアが湧きやすいと思います。
プレゼンの三部構成については以下の記事も↓
まとめ
仕事ができるかどうかは、視点、視野、視座にかかっています。
特に、「視座」がどこにあるのか、がポイントになります。
今回、ご紹介したピラミッドは、さまざまな概念に応用できると思います。
- 本質と現象
- 目的と手段
- 要約と全容
- 戦略と戦術
- 理想と課題
- ビジョンと計画
頭がいいと言われる人たちは、ものごとを高い視座から俯瞰的、多面的、長期的に見て、やるべき仕事に取り組んでいます。
もし、仕事がうまくいっていない、と感じることがあるなら、高い視座からものごとを見てみましょう。
広い視野から、さまざまに視点で考えることで、かならず問題解決の糸口が見つかると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。