「ちょっと考えて、またお返事します」
「今は余裕がないのよね」
「一度、嫁さんに聞いてみるわ」
あなたが営業マンなら、よく聞くフレーズですよね。
営業では、いつもスムーズに商談が進んでいくわけではありません。
というより、スムーズにいくことの方が少ないものです。
成約にこぎつけるまでは、文字通り山あり谷ありです。
しかし、こうした反対にうまく対処できる営業マンがいる一方、焦ったり、あきらめたりする営業マンもいます。
その違いはどこにあるのでしょうか?
それは、反対に対するスタンスです。
反対にうまく対処するには、もちろん技術の習得が必要です。
しかし、技術の前に、まず反対に対するスタンスを変えてみましょう。
スタンスを変えれば、反対を恐れるのではなく、むしろ歓迎できるようになるかもしれません。
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「反対」に対するスタンスを見直す
多くの営業マンを見てきて感じることですが、見込客の反対にうまく対処できない人は、反対に対するスタンスに問題があることが多いように思います。
スタンスとは、反対に対する姿勢です。
スタンスが間違っていると、せっかくの身につけた技術も効果的に使えません。
まずは、そのスタンスを見直しましょう。
反対に対する基本的なスタンスは次の3つです。
- 反対を恐れない
- 反対をすぐに処理しようとしない
- 反対を封じ込めない
具体的に考えてみましょう。
反対を恐れない
なによりもまず、反対を恐れない、ビビらない ことです。
これは、決して精神論、根性論ではありません。
反対を恐れる必要は、本当にないのです。
商談中、営業マンの言うことに対して、見込客はさまざまなことを言ってきます。
当然、その中にはネガティブなものもたくさんあります。
問題は、それらをすべて「反対」だと見なしてしまうことです。
しかし、ちょっと考えてもらいたいのですが、そもそも見込客は、いつも本気で反対しているのでしょうか?
つまり、はっきり「NO!」と言っているのでしょうか?
ノンアポの飛び込み営業とか、ゲリラ的なテレアポ営業は別として、実際には、そんなことは稀です。
大概は、ちょっとした「ツッコミ」だったり、ただの「意見」だったり、ときは悪気のない「ウソ」だったりします。
それがわかっていないと、次のような問題が勃発することになります。
- 過剰に反応をしてしまう
- 不要な防衛態勢をとってしまう
過剰に反応をしてしまう
反対を必要以上に恐れていると、反射的なレスポンスをしてしまいがちです。
つまり、じっくり落ち着いて対処できなくなるのです。
反射的に反応してしまうと、どうしても否定的な対応になりがちです。
つまり、見込客の反対を「YES」ではなく、慌てて「BUT」で打ち消そうとしてしまうのです。
当然、見込客の心象は良くありませんし、時には不審に思われます。
また、多くの場合、反応も過剰になりがちです。
反対の多くは、ボクシングでいうと軽いジャブのようなもの。
ところが、ビビっていると、それが強烈なカウンターパンチに見えてしまうのです。
過剰に反応すると、場合によっては見込客の不審を買ってしまいます。
不要な防衛態勢をとってしまう
見込客の反対に、うまく対処できなかった経験が重なると、それが「恐れ」に変わっていきます。
ちょっとした「トラウマ」といってもいいかもしれません。
すると、できるだけ反対されないように、次のような防御態勢をとるようになります。
- 言いたいことを、オブラートに包んで話す
- 質問するのが怖く、自分から答えを言ってしまう
- 「間」が開かないように、一方的にしゃべる
こうした防御態勢をとると、見込客には、自信のない、腰の引けた営業マンにしか見えません。
さらに、これが常態化すると、次第に見込客に対するスタンス(立ち位置)が、下がっていきます。
スタンスが下がると、見込客を積極的にリードしていくことができません。
そして、最悪の場合、反対ではなく、見込客そのものを恐れるようになってしまいます。
こうなってしまうと、営業という仕事が苦痛になります。
見込客の反対は、恐れる必要がないと分かれば、こうした不要な防御態勢をとることも無くなります。
反対をすぐに処理しようとしない
僕がいた外資の生命保険会社では、研修プログラムに「反対処理」なる単元がありました。
どうやら、この「反対処理」という言葉は、保険業界特有のものみたいです。
しかし、この「処理」という言葉は、ちょっとイケてません。
見込客の反対は、ゴミやムダ毛ではないのです。
結論から言うと、反対をすぐに処理しようとしてはいけません。
反対を額面どおりに受け取らない
人は、思っていること、考えていることを、常に正直に話しているわけではありません。
特に、営業マンに対しては、誰もが天邪鬼(あまのじゃく)になります。
天邪鬼とは「わざと相手に逆らう、まわりとは違うことを言う」人のことです。
また、自分の思いを正確に言葉にすることも、実は意外に難しいものです。
そのため、言葉にしたときには、なぜか真意とはまったく逆の表現や、無関係な話になっていることも多いのです。
実は、対処しなければならない「本当の反対」は、そう多くはないのです。
しかし、多くの営業マンは、見込客の言葉を額面どおりに受け取ってしまいます。
その結果、「とにかく処理しなければ!」と、出てくる反対を、まるでモグラ叩きみたいに、次から次に始末しようとするのです。
残念ながら、そのほとんどは、本当の反対ではないのです。
見込客の反対は、まず受け入れる
まず反対を受け入れること、これが鉄則です。
反対にうまく対応するには、何よりもまず見込客の本音を知ることが大切です。
それがわからないまま反対に対応しても、的外れになってしまいます。
反対を受け入れてくれない営業マンに、見込客は本音を話そうとは思いません。
形だけでなく、ちゃんと共感して認めてあげるようにします。
ただし、「受け入れる、認める」とはいっても、本当に同意するわけではありません。
「あなたの言いたいことはよくわかります」という意思表示です。
そのあと、「では、私の意見をお話します」と、切り返していくのです。
ところで…
反対に対して、切り返したり、説得したりするのは、見込客の本音や真意がわかってからです。
まず「YES」で認めること、これを忘れないようにしましょう。
反対を封じ込めない
不要な防御態勢の1つに、「間」が開かないように、一方的にしゃべる、というのがありました。
これは、途中で反対が出ないよう、封じ込めておきたいという心理が働くからです。
しかし、そうやって商談を進めると、封じ込めた反対を、どこかで一挙に受けるハメになります。
反対は封じ込めるよりも、むしろ、途中、途中で引き出しながら、対応しておくほうが、はるかに成約率は上がります。
特に、商談途中で、見込客の「何か言いたいことがありそうな」ちょっとしたサインに気づくことがあるはずです。
しかし、多くの営業マンは、それに気づかなかったふりをして、とにかく商談を進めようとします。
そんなときこそ、勇気を持って、見込客の疑問や意見を聞くべきです。
遠慮なくおっしゃってください。
見込客のサインに気づかないときでも、要所、要所でこまめに確認を取るべきです。
見込客の反対は「質問」だと考える
見込客の反対を質問形に変えてみる
反対を「恐れる必要はない」とはいっても、なかなかそうは思えないかもしれません。
そんなときは、見込客は反対しているのではなく、質問しているのだ、と考えてみましょう。
具体的には、反対の言葉の後に「どう思う?」とか「どうしたらいい?」という言葉を付け足してみるのです。
質問だと考えると、落ち着いて対応できるようになるだけでなく、どう対応したらいいか、その切り口を見つけやすくなります。
見込客の反対の正体は?
反対を質問形に変えてみると、分かることがあります。
それは、見込客は反対はしても、決して断っているわけではないということです。
では、反対の正体はなんでしょうか?
それは、多くの場合、
「もっと、私を納得させて!」
という、サインです。
見込客の反対をそう捉えると、反対は恐れるものではなく、むしろ歓迎するものだということがわかります。
これが腑に落ちると、反対に対するスタンスも自然に変わります。
見込客にちゃんと納得してもらい、正しい選択ができるよう背中を押してあげること。
これが営業マンの重要な役割なのです。
まとめ
見込客の反対に対するスタンスを見れば、できる営業か、そうでないかが分かります。
反対が出ることは、営業では自然なことです。
そして、反対を注意深く聞くことで見込客の真意や本音をつかむことができます。
実際、優秀な営業マンは、まったく反対しない見込客の方が、むしろ厄介だと思ってます。
反対をどう処理するか、という技術論に走る前に、まず反対に対するスタンスを変えましょう。
今まで何を恐れていたのだろう、という気づきがあるかもしれません。