「何を質問していいのかわからない…」
これは、新人営業マンが現場で最初にハマる落とし穴です。
商品知識を身につけ、セールストークを覚えただけでは商談になりません。
当たり前のことですが、「話す」「聞く」だけでは、コミュニケーションは成り立たないのです。
日常の会話を振り返ってみると、会話は互いに「質問」をしあうことによって成り立っている、ということに気づくはずです。
ところが、営業マンは「質問」について、ちゃんと学ぶ機会がほとんどありません。
だから、どうしても「浅い質問」や「尻切れトンボの質問」になってしまうのです。
効果的な質問ができるようになると、営業のレベルは格段に上がります。
一見、つかみどころのない「質問」ですが、たった2つのポイントを意識するだけで、質問力をアップさせることができます。
Contents
そもそも何のために質問するのか?
何事もまず目的が重要です。
「そもそも、何のために質問をしているでしょうか?」
ちなみに、「質問」の意味は、
わからないところや、疑わしい点について問いただすこと。
また、その内容。「質問に答える」「先生に質問する」デジタル三省堂
知らないこと、わからないことがあるから質問する。
極めて、シンプルです。
営業では、互いに質問しあうことによって「情報を明確化し、共有する」ことができます。
つまり、質問によって相互理解を図ることができるのです。
しかし、それだけではありません。
質問によって、「気づき」を得られたり、考えを「整理」することもできます。
質問をうまく設計することによって、見込客を「リード」することもできます。
質問は、コミュニケーションの質に大きく影響する要素なのです。
とはいっても、質問はそう簡単ではありません。
しかし、2つのポイントを押さえるだけで、質問をシステマティックに考えることができるようになります。
質問は2つのポイントを押さえる
個人的な話ですが、僕が「質問」の壁にぶつかったのは、採用面接の質問をする立場になったときでした。
面接では、「バイタリティ」とか「学習能力」とか、候補者の能力を聞き出す質問をしなければならなかったのですが、これができないのです。
もちろん、「質問集」なる虎の巻は手元にあるのですが、そこにある質問の次が続かないのです。
しかし、あるとき、とても単純なことに気づいたのです。
この気づきによって、つかみどころのなかった「質問」を整理して考えることができるようになりました。
その単純なこととは、次の2つ。
- 質問の基本は「5W2H」
- 質問には、2種類の「方向性」がある
質問の基本は「5W2H」
質問には、大きく「限定質問」と「拡大質問」がある、ということは多くの営業マンが知っています。
限定質問は、「はい」「いいえ」で答えられる質問と、二者択一(which)の質問のことです。
むずかしいのは拡大質問なのですが、実は、あるとき、
「拡大質問って、結局5W2Hのことやん!」
という単純なことに気づいたのです。
- who(誰が)
- when(いつ)
- what(何を)
- where(どこで)
- why(なぜ)
- how(どうやって)
- how(どれくらい)
もちろん、5W2Hだからといって簡単なわけではありませんが、少なくとも「何を聞いたらいいのか」という悩みからは解放されるはずです。
ちなみに、「why(なぜ)」は問い詰めている感じを与えるので、ほかの言い回しに変えたほうが無難です。
質問には「方向性」がある
もう1つの気づきは、質問には「方向性」がある、ということでした。
きっかけは、コーチングを学んだこと。
そこで、いろいろなワークをしているうちに、質問には「2種類の方向性」があることに気づいたのです。(というより教えてもらった)
それは「上・下・横」と「時間軸」です。
「上へ、下へ、横へ」3つの質問
イメージしてもらいたいのは、「視座、視野、視点」です。
- 視 座 … どこから見てるか
- 視 野 … どの範囲まで見えているか
- 視 点 … どこを見てるか
「上へ・下へ・横へ」の質問は、見込客の「視座・視野・視点」を変える質問のことです。
これは、登山に例えるとわかりやすいかもしれません。
例えば、山を上へ登って行くとどうなるでしょうか。(視座を上げる)
登れば登るほど「視野」が広がり、遠くまで見えるはずです。
一方、細かいところは見えなくなります。(視点)
逆に、山を下へ降りて行く(視座を下げる)と、「視野」は狭くなり、細かいところまで見えてきます。(視点)
もし、同じ高さの場所で、横へ移動して行くと、どうでしょう。
「視点」が変わり、違う風景が見えてくるはずです。
つまり、「上へ・下へ・横へ」の質問とは、見込客に山を登ったり、降りたり、横へ移動したりを、促す質問というわけです。
まとめてみましょう。
- 上への質問 … 最初の原点、本質を問いかける質問
- 下への質問 … 具体的、詳細、を問いかける質問
- 横への質問 … 他の可能性、例外、を問いかける質問
ちょっと難しく思ったかもしれませんが、基本的に使うのは次のたった3つだけ。
「そもそも?」
「具体的には?」
「他には?」
上への質問…「そもそも?」
「そもそも」とは、最初の、とか元々、本来、といった意味です。
話が、バラバラになりかけたり、煮詰まったりしそうなときに有効です。
「目的」や「本質」を明確にすることができます。
下への質問…「具体的には?」
これは、営業マンがよく使う質問ですね。
曖昧なものを具体化させるとき、大きなかたまりを細かく分けるときに使います。
横への質問…「他には?」
視点を変えるときに使います。
この「横へ」の質問は、意外に忘れがち。
営業マンは、ついつい、同じところばかりを掘り下げがちです。
こうした質問で、見込客の「視座、視野、視点」を変えることによって、見込客自身が新しい気づきを得ることができるようになります。
時間軸をベースにした質問
時間軸とは「過去」から「現在」、「未来」へという時間の流れです。
最初のうちは、過去、現在、未来の順番に聞くことを基本にします。
この時間軸を意識することには、次のようなメリットがあります。
- 見込客の話をコントロールできる
- ストーリーが生まれ、未来をイメージしやすい
見込客の話は、放っておくと、時間軸のあっちこっちに飛びます。
そのまま応じていると、話が進まなくなることがあります。
時間軸に沿った質問をすることによって、それをコントロールすることができるのです。
また、時間軸に沿って質問していくと、必然的にストーリーが生まれます。
ストーリーができると、見込客は理想とする未来をイメージしやすくなります。
どちらかというと、営業マンは、見込客の「過去と現状」の問題ばかりに目を向けがちです。(いわばあら探し)
しかし、見込客が実現したいと思う未来を明確にしてあげることの方が、本当は重要なのです。
質問がうまくできない理由を知る
さて、ここで、ひとつ認識しておくべきことがあります。
それは、技術や知識を持っていても、それが実際には使えないことなのです。
どうしてうまく質問が使えないのか。
営業マンの育成をしながら、僕もそれをずっと考えてきました。
そして、多くの営業マンを見てきて、ちょっとした、それも意外な「落とし穴」を発見をしました。
それは、
- 実は、質問をするのが怖い
- わかった、と思うのが早い
- 見かけのニーズに飛びついてしまう
質問の知識や方法論を身につける前に、この「落とし穴」を認識しておく必要があります。
実は質問をするのが怖い
最初の障害は「恐怖」です。
これは、同意してもらえると思うのですが、実は、質問するのはちょっと怖かったりします。
この恐れの正体を知るために、次のような事例を用意してみました。
これは、僕が実際に教えているテストクロージングのひとつ。
今、ちょっとだけ恐れの正体がわかったんじゃないでしょうか。
この恐れは、ひと言で言ってしまうと、
「墓穴を掘ってしまうのでは」
という恐れです。
もう少し具体的に言うと次の3つです。
- 否定的な返答が返ってくるかもしれない
- 嫌がられるかもしれない
- 商談をリードできなくなるかもしれない
こうした恐れが、鋭い質問をすることを躊躇させ、当たり障りのない、いわゆる「浅い質問」しかできない要因になっているのです。
これをどうやって克服するか。
残念ながら、恐れている自分を認めて、勇気を出して質問する、しかないのです。
勇気を出して質問すると、必ず次のことがわかると思います。
- 心配していることは起こらない
- たとえ不安が的中しても結果は同じ
恐れというものは、いつも、だいたい大げさです。
実際には、心配していることは滅多に起こらないし、起こったとしても、決して思っているほどではありません。
たとえ、そこで「NO」が返ってきたとしても、早く結果がわかった、というだけです。
なので、僕は新人営業マンにはこう言っています。
「怖いと思ったら、頭から突っ込むチャンス!」
「わかった」と思うのが早い
次の障害は、「あー、わかった、わかった!」という早合点。
何かの本に書いてありましたが、人の脳は、「空白」を嫌うのだとか。
そのため、パズルのピースが少々欠けていても、脳が想像力を発揮して、そこを埋めてくれるのです。(それも勝手に)
そうやって、僕たちは「わかった」となるわけです。
でも、これは厳密にいうと「わかった」ではなく「わかったつもり」
実は、この「わかったつもり」が、質問を終了させてしまうのです。
この落とし穴にハマらないようにするには、頭をニュートラルで白紙の状態にしておく必要があります。
簡単にいうと、子供のようなピュアさです。
見込客の話は、多くの情報が削除されています。
それを、自分の解釈で補わず、逆に「どんな情報が削除されているか」を考えるクセをつけましょう。
すると、自然に質問が浮かんでくるようになるはずです。
見かけのニーズに飛びついてしまう
最後の障害は、言葉が悪いですが「飢え」です。
営業マンは「売る」のが仕事。
だから、見込客が、不満や要望を口にすると、飢えたオオカミのように飛びついてしまう習性があります。(追い込まれてる営業マンは特に)
この見かけのニーズに飛びついてしまうと、それを前提に商談を進めてしまうため、質問の範囲が極端に狭くなるのです。
その結果、本来聞くべきことを、聞かなくなってしまうのです。
本当のニーズは、多く場合、潜在化しています。
だから、見込客がニーズらしきことを口にしても、「それ、ホンマかいな」という、むしろ疑いを持つことです。
疑いを持つと、何を質問したらいいのかも見えてくるはずです。
まとめ
営業をしていると、説明すること、プレゼンすることに意識が向きがちになります。
しかし、実際の商談では、それ以上に質問スキルが求められます。
「そんなこと、考えたことなかったなあ」
と、言ってもらえる質問ができる営業マン、それを目指して欲しいと思います。
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