営業スキル

第三者話法とは? その効果と具体的な使い方

【第三者話法】

その場にいない第三者を商談の中に登場させ、その影響力を味方につける話法のこと

「第三者話法」を聞いたことがない、という営業マンは少ないと思います。

しかし、その効果を実感し、効果的に使えている営業マンは多くありません。

第三者話法をうまく使うことで、次のようなことが可能になります。

  • 見込客を自然にリードすることができる
  • 「考えたい」と言われることが少なくなる
  • 反対に対してスムーズに切り返せる

今回は、第三者話法は、なぜ効果的なのか、どのように使えばいいのかを、誰にでもわかるように、具体的に解説します。

第三者話法の目的

何かを買おうと思ったとき、口コミ情報やレビューを確認しませんか?

たいていの見込客は、次の2つの不安を抱えています。

  • 営業マンの話を信用しても大丈夫か?
  • 自分の判断に間違いはないだろうか?

そのため、自分以外の人の言動が、どうしても気になります。

第三者話法は、こうした見込客の不安を払拭するために使う話法です。

第三者の影響力を使うとは、具体的には次の2つです。

  • 第三者の口を借りる
  • 第三者の行動と結果を借りる

これにより、営業マンは伝えたいことを、第三者を介して間接的に伝えることができます。

その結果、見込客の抵抗を受けることが少なくなるのです。

また、第三者の言動は、見込客が自分の判断や考えが、正しいかどうかを判断する材料になるので、不安を解消することができるのです。

基本編 「みなさん」を使う

まず、「みなさん」を使った2つの基本フレーズを覚えましょう。

「みなさん、そうおっしゃいます」

「これは、みなさんに(が)〜なんです」

それぞれ「見込客の話を受けるとき」「見込客をリードしたいとき」に使います。

「みなさん」という第三者には、マジョリティという影響力、つまり「信用できそう」「間違いがなさそう」と思わせる力があります。

「みなさん、そうおっしゃいます」

まず、見込客の話を受けるときに使ってみましょう。

話の内容が、肯定的か、否定的かに関わらず、使うことができます。

見込客
見込客
これは、とても使いやすそうね。
営業マン
営業マン
はい、みなさん、そうおっしゃいます。

 

見込客
見込客
これだけ機能があっても、実際には使わないでしょ?
営業マン
営業マン
ですよね。みなさん、そうおっしゃいます。

ただ「そうですよね」と受けると、それは単なる営業マンの意見です。

しかし、「みなさん」で受けると、見込客は幅広い同意を得られたようで、承認欲求だけでなく、安心感を得ることもできます。

実際に使ってみても、目に見えた効果は実感しにくいと思いますが、水面下では、見込客の抵抗を受けずに、スムーズに商談が進むよう、ちゃんと効果を発揮しています。

「これは、みなさんに(が)〜なんです」

次は、見込客を積極的にリードするときに使うフレーズです。

説明の後、もしくは前に、このフレーズをつけると、見込客は「みなさん」の影響を必然的に受けることになります。

【説明の後に使う】
説明の後に使うと、見込客の印象に残りやすく、最後の駄目押し的な役割を果たします。

営業マン
営業マン
実は、これ、みなさんに非常に喜んでいただいているサービスなんです。
見込客
見込客
(そんなにいいものなんだ)

 

【説明前に使う】
説明の前に使うと、見込客の注意を引きつけることができ、見込客は話に集中しようとします。

営業マン
営業マン
これは、みなさんが一番気になる、とおっしゃるところなんですが…
見込客
見込客
(え?何が気になるんだろ…)

応用編「みなさん」を具体的にする

「みなさん」という第三者には、マジョリティとしての影響力がありました。

今度は、この「みなさん」を、次の具体的な第三者に変えていきます。

影響力としては、以下の3つがあります。

  • 同じ属性の人 …親和性という影響力
  • 権威ある人  …信頼性という影響力
  • 理想的な人  …自己実現という影響力

同じ属性の第三者(親和性)

人は、自分と同じ状況の人や、同じ悩みを持つ人など、属性が同じ人たちには、親近感を感じ、その言動を抵抗なく受け入れます。

つまり、同じ属性の第三者を使うことによって、「親和性」という影響力を使うことができるのです。

まず「みなさん、そうおっしゃいます」を、同じ属性の第三者に変えてみましょう。

見込客
見込客
資産運用について、もっと勉強した方がいいのかな、と思ってるんです。
営業マン
営業マン
そうですね。20代の独身女性の方は、みなさん、そうおっしゃいますね。

親和性という影響力を使うと、見込客は、より「自分ごと」として感じられるようになります。

また、第三者が具体的になったことで、信憑性も増していることもわかると思います。

これを、さらに変化させると

見込客
見込客
資産運用について、もっと勉強した方がいいのかな、と思ってるんです。
営業マン
営業マン
そうですね。20代の独身の方、中でも女性の方は、みなさん、そうおっしゃいますね。

こうすると、「女性」という属性が強調され、影響力がより強くなります。

「20代の独身女性」は、「20代」「独身」「女性」という3つの属性を含んでいます。属性を分けて使うことで、特に強調したい属性を伝えることができます。

その際、「特に」「中でも」「とりわけ」などの言葉を覚えておくと便利です。

 

今度は「これは、みなさんに〜なんです」を、同じ属性の第三者に変えてみましょう。

営業マン
営業マン
実は、初めてご購入されるみなさんに、とても好評な商品なんです。

 

営業マン
営業マン
これは、共働きのご夫婦、特に奥様に喜んでいただいているサービスなんですが…

属性が同じ第三者を使うと、見込客は自分のこととして受け止めやすくなるため、商談を自然な形でリードすることができます。

権威のある第三者(信頼性)

権威がある第三者とは、その道のプロ、専門家や、有名人を指します。

権威がある第三者には、「信頼性」という影響力があります。

営業マン
営業マン
これは大手航空会社のCAさんの間では、人気NO.1のスポットらしいです。

 

営業マン
営業マン
これは、保険会社で商品開発している、いわばプロのみなさんが選んでいる保険なんですが…

ただ、この手法は、TVショッピングや通販サイトなどで、すでに手垢がついてしまっています。場合によっては、逆効果になる可能性がありますので注意が必要です。

 

理想的な第三者(自己実現)

第三者話法を最も効果的に使える方法、それが「理想的な第三者の影響力」を使う手法です。

人には、「もっと幸せになりたい」とか「豊かになりたい」といった、様々な自己実現欲求があります。

そのため、自分の理想を実現している人、あるいは、同じ理想を持っている人には、強い影響を受けます。

この理想的な第三者の影響力を使うことによって、同じ行動を取るように仕向けることができるのです。

【見込客の話を受けるとき】

見込客
見込客
資産運用について、もっと勉強したほうがいいのかな、と思ってるんです。
営業マン
営業マン
そうなんですね。実は、経済的に、しっかりと自立されてる女性の方は、みなさん、そうおっしゃいますね。

 

【見込客をリードしたいとき】

営業マン
営業マン
これは、税務だけでなく、クライアントの経営を幅広くサポートしたい、という税理士の先生方に、特に喜んでいただいている情報なんです。

 

営業マン
営業マン
これは、優秀な人材の採用に成功している経営者のみなさんに、共通している考え方なのですが…

 

これを、見込客に投げかけるパターンに変えてみましょう。

営業マン
営業マン
先生は、税務だけでなく、クライアントの経営を幅広くサポートしたい、というお考えはお持ちですか?
見込客
見込客
うん。今、それを目標に頑張ってるんだよね。
営業マン
営業マン
そうなんですね。実は、そういう先生方に、非常に喜んでいただいてる情報なんですが…

こうした会話にすると、さらに見込客をリードしやすくなります。

ちなみに、一般的な理想を使っても効果がありますが、見込客の本当の理想を把握しておくと、より効果が上がります。

 

番外編:逆の第三者影響力

人には、「みんなと同じでありたい」という欲求とは裏腹に、「みんなと同じは嫌」という欲求も併せ持っています。

営業では、この欲求を刺激することが、時には武器になります。

いわば「逆の第三者影響力」です。

「プロ」「専門家」といった第三者が使える場合は、その影響力も使いましょう。

営業マン
営業マン
これは、まだ一部の専門家しかご存じない情報なんですが…

 

営業マン
営業マン
プロの方の除いて、この商品の良さに気づいている人は、まだほとんどいません。

これは、見込客の「優越感」「自尊心」に訴えかける手法と言えます。

 

第三者を使って反対に応酬する

見込客の反対には、「Yes But法」がよく使われますが、この「But 」を営業マンではなく、第三者に言ってもらう方法です。

見込客
見込客
いやあ、この値段はちょっと高いね
営業マン
営業マン
そうですよね。みなさん、そうおっしゃいます。実は、もっと値段の安いものを、ご提案させていただくこともあるんですが、ほとんどの方が「少々高くても、長く使えるものの方が安心だし、結果的にコストも抑えられるね」と、最終的には、この商品を選ばれるんですね。それについて、〇〇さんはどう思われますか?

 

見込客
見込客
すごくいいなあ、とは思うんですけど、少し考えさせてもらってもいいですか?
営業マン
営業マン
わかりました、ぜひお考え下さい。ところで、先日お会いした方も「考えたい」とおっしゃったんですが、実は同席していた奥様が、「考えるんやったら、今考えたらええやん」って、おっしゃったんですね。で、結局、ご不安な点などをその場で聞かせていただいて、最終的にはご納得頂いたんですが、〇〇さんも、もし気になるところがあるんでしたら、今、聞かせていただけませんか?

もちろん、第三者話法を使ったからといって、必ず成功するわけではありません。

ただ、営業マンが直接説得するよりも、はるかに成功率は高くなります。

こうした第三者を使った応酬話法は、なかなかアドリブではできません。
事前にしっかりとトークスクリプトを作って、いつでも使えるようにしておくことが大切です。自分でいろいろなパターンを作っておきましょう。

 

あきらかな「うそ」は絶対につかない

第三者話法を使う上で、これは非常に重要なことです。

第三者話法を含め、すべて営業上のテクニックは、見込客に「本当に正しい選択をしてほしい」という「For Customer」の精神に基づいて使われなければなりません。

その精神に基づいているのであれば、少々話がオーバーになったり、話を盛ったりすることに、罪悪感を感じる必要はないと思います。

しかし、あきらかな「うそ」は絶対に使うべきではありません。

それは、営業マンではなく、単なる詐欺師です。

営業の世界に長く身を置いてきた経験から、そういう営業マンが成功することは、100%ない、と断言しておきます。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。

第三者話法というと、実際の導入事例や、成功事例、あるいは失敗事例などを紹介することだと思われています。

しかし、実際にはもっと奥の深い、心理学に基づいたテクニックです。

もし、商談がうまく進まない、なかなか納得してもらえない、という悩みがあるなら、第三者の影響力を効果的に使えているか、検証してみてください。

どんなテクニックも、しっかりと事前準備して、実際に使ってみることで習得できます。
まずは、基本的な使い方から始めてみましょう。

また、第三者話法は、YES BUT法と組みわせて使うことで威力を発揮します。

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・基本形「みなさん」を使う
  「みなさん、そうおっしゃいます」
  「これは、みなさんに(が)〜なんです」

・具体的な第三者を使う
  属性が同じ人「親和性」
  権威がある人「信頼性」
  理想的な人 「自己実現』

・逆の第三者影響力
・第三者で反対に応酬する
・あきらかな「うそ」は絶対につかない

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