営業マンにとって、新規見込客の開拓は、最大の課題であり、同時に最大の悩みです。
見込客の発見方法は、さまざまです。
飛び込み、電話、紹介、セミナー集客、異業種交流会、SNS発信…
その中でも、紹介で営業したい、と考えている営業マンはたくさんいると思います。
しかし、同時に次のような悩みも抱えています。
紹介をどう依頼したらいいのかわからない
依頼してもなかなか紹介をもらえない
紹介をもらったのにその人に会えない
しかし、こうした悩みは、「技術的」なことだけでは解決しません。
なぜなら、紹介で営業できるかどうかは、その取り組むスタンス(姿勢)で決まってくるからです。
スタンス(姿勢)を変えれば、結果も必ず変わります。
Contents
紹介で見込客を作るメリット
まず、紹介による見込客の開拓のメリットを、改めて整理してみましょう。
- 有益な情報を事前に得られる
- 会える可能性が高い
- 成約率が高い
これらは、誰もがすぐに思いつくことですが、他にもあります。
- 危ない見込客を回避することができる
- 紹介で会った人には、次の紹介を依頼しやすい
- 無関心層の見込客にアプローチできる
- いつでも、すぐに始めることができる
これらは、営業サイドのメリットですが、メリットは紹介された人にもあります。
- 知人、友人からの紹介なので信頼性がある
- どんな営業マンなのか事前にわかる
- 紹介者がいることで安心感がある
- 紹介者の顔を立てることができる
情報ソースの中で、知人や友人からの「生」の情報は、もっとも信頼できる「質」の高い情報だと、多くの人は認識しています。
大量の情報が溢れる今、多くの人が求めているのは、情報の「量」ではなく「質」なのです。
「紹介で営業できる」という能力は、今後、ますます必要な能力になるのは、間違いがありません。
紹介に対する2つのスタンス
営業マンの紹介に対するスタンス(姿勢)は、大きく次の2つに分かれます。
実は、どちらのスタンスを取るかで、明暗が分かれるのです。
- できれば紹介をもらいたい
- 必ず紹介をもらう
このスタンスの違いをわかりやすくするために、具体的なトーク例で比べてみましょう。
❶「できれば紹介をもらいたい」
❷「必ず紹介をもらう」
これで紹介がもらえるかどうかはさておき、スタンスの違いがわかってもらえたでしょうか。
つまり、紹介を依頼する意図が、「打診するだけ」なのか、「具体的に入手すること」なのか、という大きな違いがあるのです。
トップクラスの営業マンでもない限り、打診するだけで紹介がもらえることはありません。
つまり、あなたが、紹介営業で成功したいのであれば、「❷かならず紹介をもらう」というスタンスに変える必要があります。
なぜなら、「紹介しよう」という感情は、自然発生的には起こらないからです。
自発的な紹介に期待をしない
「できれば紹介をもらいたい」という営業マンは、自発的な紹介を待とうとします。
しかし、それは期待しすぎです。
実際、「紹介しよう」という感情が、自然発生的に起こることは滅多ありません。
(そして、これは誰もが気づいている)
紹介をもらえる営業マンは、自発的な紹介に期待していません。
彼らは、「かならず紹介をもらう」というスタンスで相手をプッシュし、「紹介しなければ」という気持ちにさせているのです。
言い換えると、紹介は単に依頼するものではなく、「入手」するものだと考えているのです。
商談のゴールは成約ではなく紹介をもらうこと
- 商談のゴールは「成約」ではなく、「紹介」をもらうこと
- 見込客発見が「仕事」、セールスはただの「作業」
これは、以前、勤めていた外資の保険会社で、耳にタコができるくらい聞かされたフレーズですが、紹介営業の「本質」を突いています。
営業マンにとって、見込客を作ることは、もっとも重要な仕事です。
そして、当たり前のことですが、商談すればするほど見込客は減っていきます。
見込客を枯渇させないためには、セールスプロセス上で、次の紹介をもらうしかありません。
しかし、多くの営業マンは、商談を成功させることだけに意識が向き、紹介をもらう意識は希薄になりがちです。
1件の成約をもらうより、新規の見込客を紹介してもらえることの方が、はるかに価値がある、という認識を持つことが必要です。
また、紹介をもらうことがゴールだ、と考えるようになると、商談のスタンスも変わってきます。
紹介をもらうために、どういう商談をすればいいかを考えるようになるからです。
その結果、「ただ成約になればいい」ではなく、「より高いレベルの満足度を提供しよう」というスタンスに変わってくるのです。
スタンスが変わると、成約率も上がってきます。
紹介入手はひとつのプレゼンテーション
紹介入手は、目的を持って行う、れっきとしたひとつのプレゼンテーションです。
決して商談の「ついで」に依頼するものでも、単に「打診」するものでもありません。
そういう依頼の仕方では、紹介を真剣には考えようとはしてくれません。
真剣に考えてもらうためには、相手の感情を動かし、行動を促すためのロジックが必要なのです。
紹介者が感じる不安や疑問
紹介をもらうためには、まず、相手の立場に立ってみることが重要です。
紹介を依頼された人は、どのような不安や疑問を感じるのかを考えてみましょう。
- なぜ紹介しないければならないのか
- 誰を紹介したらいいのか
- どのように紹介したらいいのか
紹介を依頼しても、こうした不安や疑問を口にする人はあまりいません。
ただ、適当な理由をつけて、やんわりと断ってくるだけです。
「なぜ、紹介をお願いするのか」
「なぜ、あなたにお願いするのか」
「誰を紹介して欲しいのか」
「何をして欲しいのか」
こうしたことを、ちゃんと言葉にして伝えられるようにしておく必要があります。
なぜ、紹介をお願いするのか?
紹介をもらうためには正当な理由が必要です。
あなたは、紹介をもらうことで、何を実現したいと考えているのでしょうか。
それが、紹介を依頼する、いわば大義名分になります。
「多くの人に役に立つ情報を伝えたい」
「この商品の多くの人に使ってもらいたい」
「悩んでいる人の問題を解決したい」
これがないと、ただ自己都合の紹介依頼だ、と取られてしまいます。
お客さんに喜んでもらったこと、役に立てたことなど、過去の経験を思い出してみましょう。
そこに、あなたが紹介をもらう正当な理由があるはずです。
なぜ、あなたに紹介をお願いするのか?
紹介を依頼するというのは、協力をお願いしているということです。
なので、「なぜ、あなたに協力をお願いするのか」という理由が必要です。
セールスプロセス上で依頼する場合は、次のように感想を聞いてから依頼してみましょう。
営業マンに、プラスのフィードバックしたあと、紹介を依頼されると「なぜ、自分が?」という疑問を感じることはありません。
また、心理的にも断りにくくなります。
感想は、具体的に、できれば複数聞き出しておくとより効果的です。
誰を紹介したらいいのか?
「誰かいませんか?」は、多くの営業マンがよく使うフレーズです。
しかし、これで紹介をもらうのは無理があります。
理由は、2つあります。
- ただの飢えた営業マンに見える
- 紹介できる人が思いつかない
「誰かいませんか」は、裏を返せば「誰でもいいです」ということです。
これは、「腹減って死にそうなんで、食べ物なら何でもいいです」と言っているように聞こえます。
さすがにこれでは誰かを紹介するのが怖くなります。
また、「誰でも」と言われると、漠然としすぎて誰も頭に浮かばないのです。
頭に浮かばなければ、見込客の口から出てくることはありません。
結局、「また考えとくわ」とか、「すぐには思いつかへんなあ」と言われるのがオチです。
紹介を依頼するには、「誰か」を「具体的な誰か」に絞るべきです。
最低でも、「最近、結婚された方」とか「大学時代の友人」「会社の同僚」など、紹介してもらいたい人の属性は伝えましょう。
何をして欲しいのか
紹介をもらったら、そのあとの段取りを相手に丸投げしてしまう営業マンがいますが、これはNGです。
紹介をもらったら、紹介者に「いつまでに」「どんな手段で」「どう伝える」のかを、できるだけ具体的に示す必要があります。
その目的は3つです。
- 紹介者の不安を解消する
- 確実に会えるようにする
- 軽くプレッシャーをかける
誰かを営業マンに紹介するのは不安です。
なぜなら、紹介した知人や友人を不快にさせるのではないか、と思うからです。
その不安を解消するために、具体的な方法を示してあげることが大切です。
実は、紹介者に丸投げしてしまうと、そこでチャンスが消えてしまうことが多いのです。
たとえば、生命保険だと、大概、次のようなパターンになってしまいます。
今日、保険屋さんに会ってんけどな、お前、保険入ってる?
・・・・・
それ、誰から入ってんの?
・・・・・
あ、親戚なんか。ほな、あかんな。また電話するわ
また、紹介者に協力してもらうには、少しプレッシャーをかけておくことも重要です。
でないと、すぐに動いてくれません。
そして、そのうち紹介するのが面倒臭くなってしまいます。
もっとも、簡単な方法は、できるだけ短い「期日」を指定することです。
今、紹介をもらいたいという意思を示す
まずは、「今、紹介をもらいたい」という意思表示を明確に示すべきです。
その意思表示をしないと、「考えておくわ」とか「そのうちまた」という結果になります。
意思表示をするもっとも簡単な方法は、訴求動作です。
具体的には、紹介を依頼するときは、手帳かノートを開き、ペンを持って書くポーズを取ってから依頼してみるのです。
実は、この訴求動作を取るか、取らないかで結果は大きく変わるのです。
最初は、少し勇気がいるかもしれませんが、「紹介をかならずもらう」という強い意志を持ってトライしてください。
シンプルな2つの原理原則
紹介営業には、シンプルな原理原則が2つあります。
- 紹介は依頼してみないとわからない
- 紹介数は依頼をした人数に比例する
紹介は依頼してみないとわからない
多くの営業マンは、自分で勝手に「もらえそう」「もらえない」を判断しすぎです。
その結果、依頼したり、しなかったりするのです。
実は、紹介がもらえるかどうかは、依頼してみないとわからないのです。
これは非常に重要なことです。
昔の話ですが、僕が生命保険の営業マンだったとき、「この人なら紹介くれるだろう」と期待したのにもらえなかったり、「この人は無理だろう」と思っていたら、何人も紹介してくれたりということが結構ありました。
結局、依頼してみないとわからないのだ、ということを痛感しました。
要は「依頼したもん勝ち」なのです。
紹介数は依頼をした人数に比例する
紹介をうまくもらうには、それなりの創意工夫は必要です。
しかし、そもそも、依頼している数が足りないという営業マンが、圧倒的に多いように思います。
こうしたら、バンバン紹介がもらえる、なんていう魔法のような方法は存在しません。
つまり、数多くの人に依頼する以外に方法はないのです。
商談に行ったら、選り好みせず「100%紹介を依頼する」という姿勢が重要です。
なぜなら、それがあなたの「仕事」だからです。
まとめ
紹介を依頼するのは、協力をお願いするということだ、とお話しました。
紹介に限らず、人が協力してもいい、と感じるのは、どれだけ真剣にお願いされたかにかかっています。
つまり、見られているのは、紹介を依頼するあなたの真剣な姿勢です。
それが、紹介がもらえるかどうかを左右しているのです。
近江商人で有名な「三方良し」という言葉があります。
三方良し
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」
売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるということ。近江商人の心得をいったもの。デジタル大泉苑
これを、紹介の「三方良し」にしてみましょう。
つまり、「依頼した人」良し、「紹介した人」良し、「紹介者された人」良しです。
ベクトルが自分だけに向いていると、三方良しにはなりません。
あなたが紹介でマーケットを広げていくことには、どのような意義があるのか、一度立ち止まって考えてみましょう。
正々堂々と紹介を依頼できる理由が見つかるはずです。