「クロージングが苦手」「うまくできない」
こうした声は、本当によく聞きます。
特に、営業経験が浅い人には、切実な悩みかもしれません。
あと一歩突っ込めなかったり、逆に突っ込んで拒否されたり…
クロージングってむずかしい…
もしかすると、あなたにもそんな悩みがあるかもしれません。
決まるか、決まらないか。
プレゼン後のクロージングは確かに重要ですし、技術も必要です。
しかし、最終のクロージングだけ取り出して、その技術を身につけても、あまり意味はありません。
まず、クロージングの概念を変てしまいましょう。
ポイントは次の3つです。
- クロージングとは、単に商談を「締める」こと
- プレゼン後のクロージングで勝負しない
- 最後は「イエス」か「ノー」を聞くだけ
今回は、この3つのポイントについて解説します。
おそらく、あなたのクロージングの概念は大きく変わるはずです。
概念が変われば、クロージングの苦痛から解放され、営業が面白いと思えるようになります。
Contents
そもそもクロージングとは何か?
そもそも「クロージング」とは、どういう行為なのでしょうか。
書籍やネットで調べてみると、だいたい以下のようになっています。
- 顧客と契約を締結すること
- 購入や契約を決断させる行為
- 最後の一押し
特に、決まった定義はないのですが、多くの営業マンも同様の考えだと思います。
そのため、クロージングに対して、以下のようなイメージがあるようです。
- 決まるかどうかはクロージング次第
- クロージングが弱いと決まらない
- クロージングには粘りが必要
こうしたイメージは決して間違いではありません。(強さも粘りも必要です)
しかし、「クロージング」=「力技(ちからわざ)」というイメージは、かなり危険です。
もし、「クロージングが苦手」「うまくできない」というのであれば、まず、こうしたイメージは、すべて忘れてしまいましょう。
クロージングとは単に「締める」こと
クロージングは英語で、「締める」「閉める」という意味があります。
宴会の最後の「締め」と同じで、クロージングとは、単に商談を「閉じる(とじる)」「終わりにする」ということです。
まず、クロージングのイメージを「購入や契約を迫るもの」ではなく、「商談を締めること」に変えましょう。
乱暴に言ってしまえば、購入が決まるか、決まらないかは二の次でいいのです。
なぜなら、商談を締める力がなければ、成約を決断させることもできないからです。
「クロージングスキル」とは、商談をちゃんと「締める技術」なのです。
では、商談をちゃんと「締める」とは、どういうことなのでしょうか。
見込客に締めささない
クロージングでもっとも重要なポイントは、まず「あなた」が商談を締めることです。
「当たり前ちゃうん?」と、思ったかもしれませんが、あなたはいつも自分で商談を締めているでしょうか?
営業がうまくいかないという人は、自分で商談を締めることが苦手です。
その結果、見込客が締めてしまっています。
見込客が商談を締めてしまうとは、次のようなパターンです。
「営業あるある」の、お馴染みのパターンです。
このケース、見込客から連絡が来ることは、まずありません(涙)
実は、このように、見込客も自ら商談を締めようとします。
もし、見込客が商談を締めてしまうと、あなたはもう商談をコントロールすることができません。
つまり、見込客が締めてしまう前に、あなたが積極的に商談を締めなければならないのです。
クロージングとは、言い換えると、どちらが商談を「締める」か、という攻防なのです。
次のアクションを起こせる「終わり方」にする
商談を締めるとは、あなたが決めた「終わり方」で締めるということ意味します。
実は、この「終わり方」が、セールスの結果を左右するのです。
たとえば、プレゼンをして、決まらなかったときのことを思い出してみましょう。
あなたは、そのとき見込客に、キッパリ「NO」と言われたでしょうか?
おそらく、ペンディング(保留)になって、結局、うやむやのまま消えていく、というパターンが多いのではないでしょうか。
これは、「終わり方」がマズかった結果です。
では、どうすれば、いいのでしょうか。
それは、あなたが「次のアクションを起こせる」終わり方にすることです。
見込客の「アクション待ち」は、なんとしても避けなければなりません。
たとえば、先ほどの事例のように、「見込客からの電話待ち」ではダメなのです。
せめて営業マンが、「何日の何時に電話をする」というように、次のアクションを起こせる終わり方にする必要があります。
これも、イケてない終わり方であることに変わりはありませんが、少なくとも、次のアクションを起こすことはできます。
電話よりは、直接会うためのアポイントを取り付けた方がいいかもしれません。
商談を、どう締めたかによって、その後の展開が大きく変わってきます。
「クロージング」とは商談を「締める」こと、の意味がわかっていただけたでしょうか。
さて、勘のいい人なら、もう気づいたかもしれませんが、実は、プレゼン後のクロージングだけ締めようとしても、意味がないのです。
初回商談から最後のプレゼンに至るまで、すべてプロセスで、しっかりと商談を締めなければなりません。
なぜなら、クロージングはセールスプロセス全体で行うものだからです。
最後のクロージングで勝負しない
クロージングはプロセス全体で行うもの
クロージングがうまくできない、という営業マンは、とにかくプレゼンに持ち込もうとする傾向があります。
商談を前へ、前へと進めることだけを考えているのです。
どうやら、「プレゼンしなければ始まらない」「勝負はプレゼンしてから」という意識があるようです。
まずこの意識をきれいさっぱり捨ててしまいましょう。
なぜかというと、そうやって無理やりプレゼンに持ち込んで、クロージングすると、見込客にかなりの重圧をかけることになるからです。
当然、見込客はその重圧から逃れようと、いろいろな抵抗をしてきます。
どれだけクロージングで頑張っても決まらないのはそういう理由なのです。
一方、売れている営業マンは、各プロセスで少しずつクロージングをかけながら、次のステップに進めていきます。
つまり、見込客に少しずつ「決断」させているのです。
そのため、プレゼン後のクロージングでは、見込客に大きな重圧はかかりません。
これを、わかりやすく図で表してみましょう。
- 見込客の心理状態を無視して、プレゼンに持ち込んでも、最後に大きな「谷」が現れます。ここで強く背中を押しても、見込客は谷を飛び越える勇気が出ません。
- 各プロセスで、見込客に少しずつ「谷」を飛んでもらいながら進めると、最終のクロージングでは、軽く背中を押すだけで飛べる「谷」になります。
実は、売れている営業マンは、勝算がないと思ったら、途中で商談を打ち切ったり、仕切り直したりしています。
つまり、彼らは負けると思ったプレゼンはしないのです。
何とかプレゼンに持ち込む、というスタンスではなく、各プロセスの結果をしっかりと見極めながら、次のプロセスに進める、というスタンスに変えましょう。
見込客をよく観察する
商談をうまく進めるためには、見込客の心理状態がどのように動いているかに、注意を払う必要があります。
そのためには、見込客に集中し、よく観察することです。
特に、意識して欲しいのは、次のアポイントを取る場面です。
というのも、見込客の心理状態がもっとも現れるからです。
アポイントを取る、というのは、れっきとしたクロージングなのです。
たとえば、次のアポイントが、あなたの指定した日程ですんなり決まる、あるいは、手帳やスマホなどで、スケージュルを確認してくれる、などは、それなりにうまく進んでいる証しです。
しかし、なかなかアポイントが決まらない、かなり先の日程を指定してくる、などは、どういう理由であれ要注意です。
そのほか、そのときの表情の変化や、間の取り方などにも注意を払いましょう。
本心がわからないときは確認する
これは、特に新人営業マンに多いのですが、見込客のネガティブなサインに気づいても、それを見なかったことにして、とにかく先に進めようとします。
しかし、これではセールスは成功しません。
見込客がどう思っているのかよく分からない、あるいは、ちょっと怪しいと感じたときは、勇気を出して確認をします。
ポイントは、プレゼンに入るまでのどこかで、購入する可能性があるのか、ないのかを、軽く打診してみるのです。
これを、テストクロージングと言います。(僕は「踏み絵」を踏ませる、と教えてきました)
テストクロージングをすることで、見込客の本音が把握しやすくなります。
本音を把握しながら、商談を進めることで、見込客との「ズレ」が少なくなります。
見込客が、まだその気になっていないときは、本音をよく聞き、対処しながら進めます。
事例を挙げてみます。
購入の可能性がある、とわかると、少し余裕を持ってプレゼンができます。
購入の可能性が低いと感じたら、プレゼンの前に対処しておきます。
それでも、可能性がない、とわかったらプレゼンせずに、改めて仕切り直した方がいいと思います。
テストクロージングの目的は、見込客の本音を確認することです。
売れている営業マンは、セールスプロセスの随所で、テストクロージングを使います。
彼らは、見込客の本音を把握することが、セールスを成功させるカギだと認識しているのです。
テストクロージングも、最初は勇気がいると思いますが、とにかく経験を積むことです。
そのうち、自然な感じで使えるようになるはずです。
最後は「イエス」か「ノー」を聞くだけ
ワンパターンのトークを決めておく
プレゼンが終わったら、もう営業マンができることはありません。
あとは「イエス」か「ノー」を聞くだけです。
あなたにできることは、買う、買わないを迷っている見込客の背中をそっと押すだけです。
ちなみに、迷ってもいない見込客の背中を強引に押しても、結果は同じです。
それでも押し続けて「イエス」と言わせても、クーリングオフになるか、苦情になるかのどちらかです。
とはいっても、やっぱり最後に「イエス」か「ノー」を聞くのは、ちょっとした勇気が必要です。(たとえ、うまく商談が進んでいても)
プレゼンの終盤からクロージングにかけては、場の空気が張り詰め、誰もがドキドキ、ハラハラする場面です。(キャリアを積んだトップ営業マンだって同じです。)
こうした緊張する場面で、もっともマズいのが、あなたの「迷い」です。
迷いなくクロージングするためには、プレゼンからクロージングに入るトークを決めておくことです。
つまり、最後のクロージングはワンパターンにするのです。
その他、いくつか事例を挙げてみます。
- 「このプランでスタートしませんか?」
- 「お支払い方法について、説明させてもらってもいいですか?」
- 「納期について、ご要望はありますか?」
- 「あとは私に任せてもらってもいいですか?」
自分なりのクロージングトークを作り、それをワンパターン化しておきます。
たったこれだけの短いトークでも、ワンパターン化しておかないと、緊張を強いられる場面ではとっさに出てきません。
こうした、ちょっと勇気のいるトークは、何度も練習しておくことです。
そして、本番では見込客の雰囲気にのまれずに、常にワンパターンで締めるようにします。
クロージングはテンポが命
ほとんど意識していないと思いますが、実は、セールスはテンポが非常に重要です。
「リズム感」「グルーヴ感」といってもいいかもしれません。
特に、最後の「谷」を飛んでもらうためのクロージングはテンポが命です。
テンポが悪いと、見込客は、最後の「谷」を飛び越す勢いに乗れないのです。
ホップ、ステップ、ジャンプ、といった感じのテンポに、見込客をうまく乗せましょう。
過去、多くの営業マンの商談を見てきましたが、決められない営業マンは、とにかくテンポが悪いのです。
テンポが悪いと、見込客が商談を締めてしまいます。
実は、買う、買わないの決断は、ほんの一瞬なのです。
「衝動」といってもいいかもしれません。
その「えいっ」という決断をさせるには、テンポよくクロージングすることが、必要不可欠です。
ついでに言うと、商談と商談の間隔も、ひとつのテンポを作ります。
間延びしないように一定のリズム感で、商談を入れていくことも、最後の決断に大きく影響をします。
最後はあなたの自信ある態度
ここまで、クロージングとは何か、ポイントはどこか、について見てきました。
しかし、最後はあなたの自信ある態度にかかっています。
自信ある態度がパワーとなって、見込客の感情を動かすのです。
そのためにも、練習を積み、失敗を恐れず、現場でやり続ける必要があります。
それが、経験となり、確信を生み、自信ある態度につながるのです。
まとめ
なかなか思うように結果の出ない営業マンに共通していることは、「No」を聞く勇気がないことです。
そのため、プレゼンに持ち込むまでは、見込客の本音を聞くことを避ける傾向があります。
つまり、それまでに商談が終わってしまうことを恐れているのです。
しかし、売れている営業マンは、まったく逆の考えを持っています。
彼らは、可能性のない見込客を見極め、それを排除しようとしているのです。
あなたが、各プロセスで見込客を積極的にリードし、商談をしっかりと締めることできるようになれば、見込客の本心は自然に見えてくるはずです。
これから、営業も対面からオンラインによる非対面に変わっていく可能性があります。
そうなると、ますますクロージング力だけで勝負するのは難しくなると思います。
最終的には、ほとんどクロージングすることなく成約に至る、というセールスを目指して欲しいと思います。