あえて乱暴な分け方をすると、営業マンには2タイプあります。
それは、商談の主導権を握れる営業マンと、それがなかなか握れない営業マンです。
もちろん、業績がいいのは前者のタイプです。
商談の主導権を握るためには、次の2つ主導権を握る必要があります。
- 場の主導権を握る
- 会話の主導権を握る
この記事では、この方法について考えます。
なかなか主導権が握れないと感じている人は、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
主導権と決定権
まず初めに「主導権」と「決定権」について整理しておきましょう。
営業において、買うか買わないかの決定権は、あたりまえですが見込客が持っています。
もし、この決定権を営業マンが無理に奪おうとすると押し売りになります。
これに対して、営業における主導権とは、「見込客が購入に至るまでのプロセス」を主導することです。
見込客をゴールに向かってシナリオ通りに導くには、商談の主導権を最後までしっかりと握っておくことが不可欠です。
ところが、この主導権を良かれと思って見込客に渡してしまう営業マンが結構います。
そうすれば買ってくれるのでは、と思っているようですが、それは大きな思い違いです。
主導権を手放したとたん、成約率はガクンと下がります。
なぜ主導権を握る必要があるのか
営業マンが商談の主導権を取れないとどうなるのでしょうか。
たいていは、次のような災難に見舞われます。
- 商談がまっすぐ進まない
- アクション待ちの状態になる
- 営業が嫌になる
商談がまっすぐ進まない
見込客には大変申し訳ないのですが、ここでは商談を犬の散歩にたとえてみます。
商談の主導権を取れないと、飼い主のいうこときかない犬の散歩のようになってしまいます。
犬が好き勝手に進んだり、あるいは止まったりすると、予定していたルートを進むことも、目的地に到達することも困難になります。
つまり、主導権が取れないと商談が制御不能に陥るのです。
アクション待ちの状態になる
営業で重要なのは、常に次のアクションが取れる状態をつくることです。
しかし、商談の主導権が取れないと、見込客のアクション待ちになってしまうことがほとんどです。
もちろん、アクションを起こしてくれれば問題はないのですが、そうならないことがほとんどです。
たとえば、次のアポイントが確定しない、プレゼンをしてもイエス・ノーがもらえない、といったことです。
これ以外にも、必要書類を用意してくれない、依頼したことを確認してくれない、なども起こりがちです。
いずれにしても、アクション待ちの状態になると、商談がペンディング(保留)状態になり前に進まなくなります。
営業が嫌になる
商談の主導権を握れないと、どうしても見込客を追いかける展開になります。
追いかけてはあしらわれ、追いかけては逃げられるといったことが続くと、さすがに営業が嫌になってきます。
実際、自分がしつこいストーカーのように思え、自己肯定感も失いがちになります。
また場合によっては、見込客から御用聞き、便利屋のように扱われたりして、これまたモチベーションを下げる要因になります。
主導権を握る方法
では、ここからは商談の主導権を握るための方法を考えてみましょう。
商談の主導権は、次の2つの主導権を握ることで可能になります。
- 場の主導権を握る
- 会話の主導権を握る
❶ 場の主導権を握る
人と人が対峙すると、そこには必ず「関係性」が生じます。
関係性とはいっても、実際には目に見えるものでもなく、また絶えず変動しているのでつかみにくいのですが、ここではシンプルに横と縦の2つの軸で考えてみましょう。
- 横の関係 … 心理的距離
- 縦の関係 … 主従(上下)関係
横の関係は心理的距離、つまり信頼度や親密度を表します。
一方、縦の関係は、スタンス(立ち位置)のことで、端的に言うとどちらが強いか、弱いかを表します
もちろん、このスタンス(立ち位置)というのは物理的なものではなく、マインド的(精神的)なものです。
場の主導権を取るとは、この縦の関係で見込客より上のスタンス(立ち位置)を取ることを指します。
ここでは、その方法を2つ挙げてみます。
- リアクションを意識する
- 問題提起をする
リアクションを意識する
スタンス(立ち位置)を高くする前に、まず低くなってしまう要因を排除しましょう。
もっとも意識して欲しいのが、見込客の言動に対するリアクション、レスポンスです。
たかがリアクションと思ったかもしれませんが、できる営業マンかどうかはリアクションを見れば一発で見抜けます。
たとえば、次のようなリアクションをすると、いとも簡単に見込客に見下されてしまいます。
くり返し型のあいづち
「あーはい、はい」とか「ええ、ええ」など、同じ言葉をくり返すあいづちです。
耳障りなだけでなく、落ち着きのない軽い営業マンの印象を与えます。
実際、あいづちを打っているというより、ただ反射的に反応しているだけといったケースがほとんどです。
見込客には、自信のある強い営業マンには決して見えません。
失望感丸出しの反応
都合の悪ことを言われたり、否定されたりすると、「あ、そ、そうですか…(汗)」といった失望感、敗北感丸出しの反応をしてしまうパターンです。
間違いなく「売れていない営業マン」のレッテルを貼られ見下されます。
「すいません」の連発
「すいません」を使ってはいけない、というわけではないのですが、何かにつけ「すいません」を連発する営業マンはとても多いように思います。
これは「私、腰の引けた営業マンなんです」と、自ら宣言しているようなものです。
ちなみに、「すいません」は敬語ではないので念のため。
卑屈な笑い方
予期せぬことを言われたり、反論されたりしたときに、反射的に出てしまう卑屈な笑い。
これは、癖になっているケースが多く要注意です。
笑い方、というのは好感度に大きな影響を及ぼすので、一度自分で確認してみましょう。
これ以外にも、見下されてしまうリアクションはたくさんあります。
こうしたリアクションをしてしまうのは、必要以上に見込客を恐れているからです。
いずれにしても、マインド的には見込客が優勢になります。
まずはこうしたリアクションを封印するようにしましょう。
これについては、以下の記事も参考にしてください。
問題提起をする
実は、どちらが主導権を握るかは、商談のスタートの段階でほぼ決まってしまいます。
そして、いったん決着がつくとなかなか覆せません。
裏を返せば、そこを制すれば主導権を持ったまま商談を進めることができるのです。
そのためには、最初のサーブを営業マンが打つ必要があります。
もっとも効果的なサーブは、「問題提起」です。
見込客に刺さる問題提起をして場の主導権をとるのです。
営業マンが問題提起をしなければ、見込客が場の主導権を取ってしまいます。
実は、仕事でもプライベートでも、その場を仕切るのは最初に問題提起をした人なのです。
問題提起は、共感をもらう、意外な事実を提供する、脅しをかける、などの切り口があります。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
❷ 会話の主導権を握る
商談というのは単なる会話ではなく、そこには明確な目的があります。
この目的を達成するためには、会話の主導権を握る必要があります。
会話の主導権を見込客が持っているとクロージングがむずかしくなり、結局、見込客のアクション待ちの状態で終わる可能性が高くなります。
ここでは、会話の主導権を握るための方法を2つ挙げます。
- シナリオを準備する
- 質問で切り返す
シナリオを準備する
会話を主導していくためには、「道」が必要です。
つまり、ちゃんと商談のシナリオを準備しておくことが重要になります。
ちなみに、シナリオとは「何を話すか」ではなく、「何をどの順番で話すか」ということです。
シナリオなしで商談に臨むのは、知らない場所を地図も持たずに進むようなものです。
これでは、見込客を案内することはできません。
しっかり準備しておきましょう。
質問で切り返す
質問する人、答える人。
どちらに主導権があるかというと、もちろん質問する人です。
質問する人は、テニスのサーブ権を持っているプレイヤーと同様に圧倒的に有利です。
とはいっても、商談では見込客から質問をされる場面がたくさんあります。
特にプレゼンからクロージングにかけては、さまざまな質問をされると思います。
ここでよくあるのが、見込客に質問される、それに答える、さらに質問をされる、というパターンです。
これは完全に主導権を奪われた状態で、営業マンは防戦一方になります。
特に、ネガティブな質問や予期せぬ質問をされたときに、こうなりやすいので注意が必要です。
では、質問されたときに、どう対処すればいいのでしょうか。
実は、主導権を奪われてしまうのは、質問に答えておしまい、にしているからです。
質問に対して質問で返せば主導権を奪われません。
質問には、質問で切り返すというのは、是非とも身につけておきたい技術です。
特に、よくされる質問に対しては、質問で切り返せるようしっかり準備しておきましょう。
【番外編(上級者向け)】
前述の通り、買うか、買わないかの決定権は見込客が持っています。
しかし、営業マンには、売るか、売らないかの決定権があります。
主導権を奪われそうになったときに、例えば「わかりました、では今回は“なし”ということですね?」と、こちらから商談を打ち切る姿勢を取ってみましょう。
一瞬にして主導権を奪い返せます。
でも、商談を打ち切ったら主導権もなにも意味がないやん、と思ったかもしれません。
もし、そう思ったなら、ぜひ現場でトライしてみてください。
びっくりすることが起こるかもしれません。
まとめ
営業という仕事は、見込客が正しい選択ができるようにその背中を押すことです。
ただの情報提供や商品説明が仕事ではありません。
そのためには、スタンスを高く取って商談の主導権をとり、見込客を積極的にリードしなければなりません。
この記事では、商談の主導権を握るために4つのポイントを取り上げました。
もし思うような結果が出ない、というのであれば、ぜひ商談の主導権が取れているかを振り返ってみてください。