コミュニケーション能力が高く、いわゆるセールスは上手いにも関わらず、なかなか成約に至らない営業マンがいます。
また、人物的には好印象なのに、顧客や得意先からの信頼度がイマイチだったりする営業マンもいます。
こうなってしまう原因はなんでしょうか。
実は、意外なところで、見込客や顧客の信頼を失っている場合があります。
それは、契約や販売における事務的な手続きを行う場面です。
営業では、売ることだけが仕事ではなく、それに付随して多くの事務的な仕事を処理しなければなりません。
アフターフォローにおいても、様々な事務的な仕事があります。
それらをミスなく確実に、そして段取りよく処理してくれたかどうか。
それが、見込客や顧客の重要なチェックポイントのひとつになっているのです。
そうした事務的な仕事を、誰よりもスマートに行うことで、お客様から厚い信頼をもらうことができます。
一にも二にも「事前準備」
営業の世界で「仕事ができる」というと、「売れていること」と考えます。
あながち間違いではないですが、それはあくまでも営業サイドの内輪の話。
見込客や顧客の視点は違います。
「仕事ができる」とは、一般的には「処理能力が高い」ことを指します。
では、「仕事ができない人」という評価をされてしまう要因はなんでしょう?
よく使われるキーワードを挙げてみます。
- ミスが多い
- 仕事が雑
- 手際が悪い
- 無駄が多い
- 段取りが悪い
- レスポンスが遅い・・・
まだまだありそうですが、これくらいにしておきます、笑
処理能力が低い営業マンは、最悪の場合「アタマが悪い」という烙印を押されてしまうので要注意です!
しかし、これは能力というより、はっきり言って「意識」と「事前準備」の問題です。
ところで、なんのために事前準備をするのでしょうか。
自分の株を上げるためではありません。
それは、見込客や顧客に「できるだけ負担をかけないように」という心遣いです。
もし、自分の仕事は売ることであって、それ以外は大した問題ではない、と考えているとしたら、それは見込客や顧客を軽視しているということにほかなりません。
まずは、意識を変えましょう。
事前準備・まずは凡事徹底
最近は、消費者保護の観点から、契約時や販売締結時に取り交す書類も多くなっています。
お客様に安心して手続きしていただくためにも、しっかりと事前準備をしておく必要があります。
まずは、当たり前のことをきっちりとする、凡事徹底を心掛けましょう。
【凡事徹底】
なんでもないような当たり前のことを徹底的に行うこと、
または、当たり前のことを極めて、他人の追随を許さないことなどを意味するー Weblio辞書
お客様のところに向かう前の事前準備について考えてみましょう。
少なくとも、以下の3つは事前に行うべきです。
- 必要なものを準備する
- 段取りを考えておく
- リハーサルしておく
① 必要なものを準備する
必要なものは2種類あります。
- 営業マンが準備しておくもの
- お客様に用意していただくもの
まず、営業マンが準備しておくものです。
準備するとは、ただカバンに入れて持っていく、ということではありません。
まず、契約書や同意書など、顧客に提示する書類によく目を通しておくべきです。
こうした書類には、多くの文言が書かれていますが、すべてを一語一句、ちゃんと読んで把握しているという営業マンは圧倒的に少ないように思います。
細かいところまで、じっくりと読み込むと意外に知らなかったことや、わからないことも出てきます。
それを、そのままにせず、ちゃんと調べて理解しておくことはとても大切です。
また、その書類がなぜ必要なのか、目的は何かについても理解しておきましょう。
どのような法律やルールに基づく書類なのかを理解しておくことは重要です。
いつ何時、お客様から質問されるかわかりません。
それにちゃんと答えらるようにしておきます。
また、言うまでもありませんが、お客様にサインや捺印をもらう箇所、必要事項を記入してもらう箇所、チェックボックス、自署が必要な箇所なども事前に確認しておきます。
こうした準備は、慣れてくるとだんだんと怠るようになります。
すると、必要なものがカバンからすぐに出てこない、最悪のときは在庫切れなどという悲劇が起こります。
(ええー、なんでないねん💦)
次に、お客様に用意していだだくものです。
モレがないように事前に確認し、それをお客様にちゃんと伝えておきます。
当日になって、突然「あれが必要です、これが必要です」と言ってくる営業マンがいますが、お客様に対して失礼です。
多くの営業マンは、準備したつもりで、実はまったくの準備不足になっています。
後手、後手に回らないように、しっかりと準備しておきましょう。
② 段取りを考えておく
事務的な手続きのスタートからゴールまでの具体的な流れを考えます。
どのような順番で説明すれば納得してもらいやすいか、どのような手順で行えば、効率的がいいかを考えてみましょう。
取り交す書類が多くなると、ただでさえ時間がかかります。
しっかりと段取りを考えておかないと、モタついて、さらに無駄な時間を要すことになりかねません。
また、手順を決めておけば、それを手続きを始める前にお客様に伝えることができます。
手順通りに書類が取り出せるようにしておくのは言うまでもありません。
③ リハーサルをしておく
多くの営業マンは、セールストークを覚えたり練習したりします。
一方で、書類や手続きの説明のスクリプト(台本)を作ったり、練習したりする営業マンはあまりいません。
しかし、早く、正確に手続きを進めるためには、しっかりとスクリプト(台本)を作って練習しておくべきだと思います。
たとえ、それが無理でもイメージトレーニングくらいはしておきましょう。
それにより、モレやダフリ、ムダがないかを確認することもできます。
予期せぬ事態に備える
ここまで、事前準備についてみてきました。
しかし、これはいわば当然のこと。
本当に重要な事前準備は、予期せぬ事態を想定して備えることです。
些細なことだと、パソコンやモバイル端末などの電子機器が使えない、事前に決まっていた契約内容が突然変更になる、お客様が必要書類を忘れる、想定していた商談時間より短くなる、などです。
営業の現場では、予期せぬことが起こり得ます。
その対処の仕方によっては、お客様から「残念な営業マン」のレッテルを貼られてしまいます。
起こりうることを事前に想定して準備しておく、これこそが、本当の事前準備だといえます。
パターン化して常に最適化しておく
商談やアフターフォローにおける事務的な様々な手続きはパターン化しておきます。
パターン化して繰り返し行うことで、よりスムーズに処理できるようになるはずです。
近年、法律が変わったり、新しいルールができたりと、営業を取り巻く環境は変化が激しくなっています。また、営業のIT化も急速に進んでいます。
それに伴って、必要な事務的な手続きも、どんどん変わっています。
いったんパターン化しても、常に最適化しておくことを忘れないようにしましょう。
まとめ
実は、人は書類にサインしたり、押印したりするときは、大なり小なり不安を感じています。
裏を返せば、「ホントに大丈夫かな」という疑いを持っているということです。
外資系保険会社にいた頃、当時のボスが「先手・正確・確実」というキャッチフレーズを作ったことがありました。(誰かの受け売りだったかもしれませんが…)
- 先 手 … 先を読んで手を打っておく
- 正 確 … 正しく行う
- 確 実 … 最後まで間違いなくやりきる
今思えば、なかなか芯を食ったキャッチフレーズだと思います。
事務処理が苦手だという営業マンは結構多いのですが、それは苦手なのではなく、単に嫌いだということです。
しかし、トップクラスの営業マンは、事務的なミスはほとんどしません。
彼らは、それが顧客の信頼を得るための、非常に重要なことだと認識しているのです。
実際、経営者などのアッパーマーケットになると、そうしたミスや手際の悪さが命取りになることも多々あります。
「画竜点睛を欠く(がりょうてんせいをかく)」という言葉があります。
画竜点睛を欠く
物事をりっぱに完成させるための、最後の仕上げを忘れること。
また、全体を引き立たせる最も肝心なところが抜けていること。ー 古事ことわざ辞典 ー
お金をいただく営業の仕事は、信用、信頼が第一です。
せっかく人間関係を築き、成約までこぎつけたのに、最後の事務的な仕事で台無しにしてしまうことがないようにしましょう。
繰り返しになりますが、事前準備をするのは、お客様に負担をかけてはいけないという心遣いです。
それを忘れずに、しっかりと事前準備をする習慣を身につければ、事務的な手続きにおいても、他の営業マンから一歩抜け出た存在になれるはずです。