生命保険の営業を始めたころ、当時のマネージャーにこう言われました。
「生命保険は、イエスバットと第三者話法だけで売れるから」
もちろん、これだけで売れたりはしません(笑)
しかし、営業マンにとって必須のスキルであることは間違いありません。
今回は、誰もが知っている、イエスバット法について考えてみましょう。
「YES+○○」法には、「BUT」 以外にも、「AND」「IF」「HOW」「SO THAT」などがあり、これらは、クッション話法とも言われています。
いずれも、見込客の意見に対して、まず「YES」で肯定してから、そのあと反論したり、意見を述べたりしましょう、という応酬話法です。
一見、誰でもできる簡単な話法のようですが、実はなかなか奥の深い話法なのです。
今回は、このYES BUT法をはじめとするクッション話法の効果を、最大限に引き出すコツについてご紹介します。
Contents
「YES+○○法」は2パターン
イエスバット法などのクッション話法には、様々なものがあります。
代表的なものでいうと、
「そうですよね。しかし…」
「そうですよね。だからこそ…」
「そうですよね。実は…」
「そうですよね。ところで…」
「そうですよね。例えば…」
「そうですよね。では…」
こうしたフレーズには、いちいち、「YES AND法」や「YES IF法」などの名前がつけられているため、ちょっと複雑な感じがします。
そのため、どこで、何を使えばいいのか、よくわからないという営業マンも多いようです。
なので、わかりやすくするために、テニスに例えてみましょう。
すると、ざっくり2パターンに分けられます。
- 「YES + スマッシュ」型
- 「YES+ ラリー」型
「YES+スマッシュ」型
文字通り、見込客の放ったボール(意見や反論)を、YESで受けた後、ストレートに打ち返してスマッシュを決めるパターンです。
「YES BUT(しかし)」「YES AND(では)」「YES SO THAT(だからこそ)」などが、このパターンになります。
・YES BUT法
ただ、今後の維持費を考えると、むしろ他の商品よりも安くなるんです
・YES AND法
実は、この値段帯で、この機能が付いているのはこの商品だけなんです
・YES SO THAT法
だからこそ、このチャンスを逃して欲しくないんです
スマッシュ型は、決め球が勝負の分かれ目になります。
スマッシュが一発で決まらないと、互いにスマッシュの応酬になり、結局、平行線で終わってしまう可能性があります。
「YES+スマッシュ」型は、説得力のある決め球があるときに効果を発揮します。
「YES+ラリー」型
一方、すぐにスマッシュを打ち込まず、ラリーに持ち込んで勝負するのが、「YES+ラリー」型です。
ラリーに持ち込むためには、見込客に対して、質問で切り返す必要があります。
したがって、基本形は、「YES+質問」の形になります。
「YES IF(もしも?)」「YES WHAT(何?)」「YES HOW(どのような?)」などが、ラリー型になります。
ところで、何と比較してそう思われましたか?
ラリー型は、こうした質問を繰り返しながら見込客を誘導し、ここ、という場面で決め球を打ちます。
ただし、見込客を誘導するためには、事前に質問の引き出しを準備しておく必要があります。
営業マンであれば、出てくる反論や否定は、ある程度予測できるので、しっかりと準備しておきましょう。
このラリー型では、決め球を打つ前に、見込客が自らを自己説得してしまうこともあります。
ちなみに、気になっている商品があるんですか?
まあ、これに決めてもいいんだけどね
スマッシュ型とラリー型、どちらが良い悪いはありませんが、できれば質問で切り返すラリー型を習得すべきです。
なぜなら、次のようなメリットがあるからです。
- 反論されている感じがしない
- 見込客がより深く考えられる
- 説得力が増し、納得しやすい
- 見込客の本心が掴みやすい
- どうでもいい反対を排除できる
さて、「YES+〇〇法」について概要がわかったところで、まずは重要なポイントを押さえておきましょう。
重要なのは YES の伝え方
「YES+〇〇法」は、クッション話法と言われるくらいですから、ポイントになるのは、 「YES 」の部分です。
この「YES」の部分が、ちゃんとクッションの役割を果たしていることが、必要不可欠になります。
たとえば、次のようなパターンはどうでしょうか。
「そうですよね。おっしゃるとおりなんですが」
「はい。確かにそうなんですけど」
「なるほど。私もそう思うんですけど」
ほとんどの営業マンは、こんな感じになっていますが、これはYES BUTもどきです。
確かに「YES」で受けてはいますが、見込客は、否定されたという印象しかないはずです。
では、「が」や「けど」などの接続助詞を使わなければいいのか、というと、それも違います。
「YES+○○法」は、言葉ありきではありません。
重要なのは、「あ、共感してくれた!」と、見込客が感じてくれたかどうかなのです。
つまり、「言いたいことは、よくわかります」と、見込客に積極的に伝えることが必要不可欠なのです。
ちなみに、イエスバット法はもう古い、通用しないという人もいますが、それはYESの伝え方しだいです。
では、どのようにしたら、それを伝えることができるのでしょうか?
YES3連発をつかう
「YES」を強調するもっとも簡単な方法として、「YES3連発」をご紹介します。
これは、たとえば、「そうですよね」で終わらず、さらにYESを重ねていく方法です。
3連発はなかなか難しい、と感じる場合は、「みなさん、そうおっしゃいます」という第三者話法を使った、次のパターンを覚えておくと便利です。
❶「そうですよね」
↓
❷ 相手の言葉をオウム返し
↓
❸「実は、みなさん、そうおっしゃいます」
もちろん、絶対に3連発が必要というわけでなく、それくらいの意識を持つことが重要だということです。
YES3連発は、クロージングの場面など、商談のカギを握る場面では、威力を発揮するはずです。
すぐに反応せずに「間」を取る
次に、必ず意識してもらいたいのが「間」です。
実は、見込客の意見や反論に対して、多くの営業マンは、反応が早すぎます。
中には、見込客の言葉が終わらないうちに、「そうですよね」と、かぶせてしまう営業マンもかなりいます。
反応が早すぎると、見込客は「今、噛まずに飲み込んだよね?」と感じてしまいます。
結局、「間」がないと、自分の意見を受け取ってもらえた感じがしないのです。
「間」を作ることによって、「ちゃんと話を受け取りました」と、伝えることができます。
説得力をアップさせる方法
「YES+〇〇」法は、YESがちゃんとクッションの役割を果たしてくれれば、それで成功と言えます。
しかし、見込客を説得できなければ、商談としては失敗です。
ここでは、その説得力をアップさせるちょっとしたコツをご紹介します。
「YES + 第三者」を使う
「YES+〇〇」法を使うのは、見込客の意見に応酬する場面です。
応酬するのは、もちろん営業マンなのですが、それを第三者を使って間接的に応酬するという方法です。
まず、YESの部分で、第三者を引き合いに出します。
基本形は、
そうですよね。みなさん、そうおっしゃいます。
このあと、「YES+〇〇」法の、〇〇の部分を、そのまま第三者に言ってもらうのです。
営業マンの言葉ではなく、第三者の言葉を使うことで、見込客もあまり抵抗感を感じません。
この第三者の「みなさん」を、より具体的な第三者にすると、さらに説得力が増します。
ちなみに、この第三者を使う応用バージョンとして、「前提」を使う方法があります。
基本形は、
最初は、みなさん、そうおっしゃいます
「最初は」には、「最後」は違う、という前提が隠されています。
誰でも使える超簡単な方法ですが、強力なボディブローのような効果があるので、ぜひ、試してみてください。
最強のテクニック「YES+沈黙」
ここまでみてきた「YES+〇〇」法は、言葉を使って応酬する方法でした。
しかし、言葉以上に強力なのが、実は「沈黙」です。
これは、見込客の意見に対して、YESで受けた後に、沈黙を返すという方法です。
「沈黙」には、無言の圧力があります。
営業マンが沈黙すると、必然的に、見込客は何か言わなければなりません。
つまり、自分の反論に、自分で答えなくてはならなくなるのです。
決断を促す場面では、想像以上の威力を発揮してくれます。(実証済み)
ただし、答えに困っている、という感じだと、逆効果になってしまいますので、「だから何?」といった、毅然とした態度を見せるのがコツです。
使うには、ちょっとした勇気が必要ですが、ぜひマスターして欲しいテクニックです。
ときにはきっぱり「NO」と言う
見込客の意見や反論に対しては、「YES」で受けるのが基本です。
しかし、ここ、という場面では、きっぱり「NO!」と言ったほうが、見込客を納得させる場合があります。
「NO」には、「YES」にはないパワーがあるのです。
また、見込客の言っていることは、いつも本心であるとは限りません。
ときには、本心とは裏腹なことを言ったり、あるいは、単なる冷やかしだったりする場合もあります。
なので、常に「YES」で答えるのではなく、場合によっては「NO」で返したり、本音を確認したりする必要がある、ということも認識しておくべきです。
まとめ
新人時代、マネージャーに言われた「イエスバットと第三者話法だけで売れる」という言葉。
その後、自分がマネージャーになったときに同じように新人に伝えるようになりました。
この2つのベタなスキルは、やはり最強だと思います。
イエスバット法は、営業の仕事を始めると真っ先に教わるスキルです。
ただ、大半の営業マンは単なる言葉のやり取りになってしまっています。
でも本当はもっと奥の深いコミュニケーションスキルなのです。
ぜひ、練習と実践を繰り返しながら研究し、この技を極めて欲しいと思います。