営業スキル

説明上手になるためのコツ❶ (準備編)

些細なものも含めると、日常には、説明があふれています。

「誰かに説明をする」

「誰かの説明を聞く」

しかし、伝える、理解してもらう、といったことが、意外にうまくいきません。

実は、「自分が理解できた」「それを説明できる」は、まったく別のものなのです。

営業も同様です。

営業マンは、自分が知っていることは、説明できると思っています。

しかし、それは大きな勘違いです。

実際、多くの見込客は「わかったようで、よくわからない」という状態に陥っています。

見込客が納得できないのは、商品や価格ではありません。

営業マンの説明の仕方なのです。

見込客は、常にシンプルでわかりやすい説明を求めています。

しかし、そういう説明ができる営業マンはそう多くありません。

裏を返せば、「わかりやすい!」と言ってもらえる説明ができるだけで、その他大勢から抜き出た特別な存在になれるということです。

「わかりやすい」とは、どういうことか?

そもそも、わかりやすい説明とは、どういう説明なのでしょうか。

僕は「聞き手の脳に負担がかからない説明」と定義しています。

つまり、聞き手が頑張らなくてもわかる説明です。

そもそも、見込客は「頑張って理解するぞ」なんて思っていません。

なので、脳に一定以上のストレスを感じると、あっという間に離脱してしまいます。

どうすれば、見込客の脳かかる負担を軽減できるのか。

その基本的なコツを、「説明を始める前(準備編)」「実際に説明するとき(本番編)」の2場面に分けて考えてみましょう。

今回は、「説明を始める前(準備編)」です。

説明を始める前にやること

わかりにくい説明になる根本的な要因。

それは、営業マン自身の頭の中が整理されていないことに尽きます。

知らないことは説明できません。

しかし、知っているからといって、わかりやすく説明できるわけではないのです。

説明をする前に、まず自分の頭の中をちゃんと整理しておくことが大切です。

しかし、むずかしいことする必要はありません。

やるべきことは、次の3つです。

  1. 説明する対象の本質を捉える
  2. 3部構成にまとめる
  3. 不要なものを捨てる

整理する力とは、言い換えると「要約力」です。

「要約力」を身につけるための、頭の使い方を、具体的に考えてみましょう。

説明する対象の本質を捉える

「そもそも」という問いを立てる

本質とは、「物事の根本的な性質、要素」のことです。

簡単にいうと、「そもそも、どうしてなの?」という問いの答え。

これは、僕がまだド新人の保険営業マンだったときの話です。

わたし
わたし
終身保険は、保障が一生涯あって、しかも、60歳以降の解約なら、払った以上のお金が戻ってくるんです。つまり、長く続けると、絶対に損をしない保険なんです!
見込客
見込客
ふーん、それでどうして保険会社は利益が出るの?
わたし
わたし
えっ?えっと、それは…(汗)

本質を知らずに、うわべの知識だけで説明すると、こんなことになります。

まず自分自身が「そもそも、なぜそうなのか?」という問いを持つことが必要不可欠です。

そもそも…
なぜ、この商品は存在しているのか?

なぜ、この機能がついているのか?
なぜ、リニューアルされたのか?

こうした問いを立てることによって、本質がわかってくるはずです。

本質を知ることが、わかりやすい説明をするための第一歩になります。

ポイントを考える

本質がわかると、重要なポイントは何か?、根拠や背景は?、結論は?など、説明を組み立てるときのポイントと、その関係性が見えてきます。

ポイントとは、料理に使う「食材」と同じです。

まず、どんな食材が使えるのを考えてみます。
そして、その中でメインになる食材は何かを見極めるのです。

このとき、先ほど確認した本質を外さないようにしましょう。

本質から外れると、いくら食材が良くても、何の料理かわからなくなってしまいます。

つまり、一貫性のない説明になってしまうのです。

目的をはっきりする

目的とは、最終ゴールのこと。

つまり、説明を聞いてもらった見込客に「どういう状態になって欲しいか」ということです。

営業マン育成の経験から言うと、説明のポイントはわかっていても、目的が曖昧な営業マンが非常に多いと思います。

例えば、営業マンがよくやっている自社の会社案内

目的もわからずやっていると、おかしなことになります。

先 輩
先 輩
ところでなんのために会社案内をしてるの?
後 輩
後 輩
えっと、いい会社だと思ってもらうためです
先 輩
先 輩
お前、採用担当者かっ!

見込客に、どういう状態になってもらいたいのか、どういう行動をとってもらいたいのか、という目的を考えましょう。

目的がないのであれば、説明する必要はないのです。

アウトプットして見える化する

本質を見極め、説明のポイントや目的が見えてきたら、それをアウトプットして見える化します。

ノートやポストイット、パソコンなどを使って、頭の中にあるものを書き出します。

書き出したものを実際に見ることには、次のようなメリットがあります。

  • 全体像が把握できる
  • 説明の組み立てがイメージできる
  • 新しい発想、アイディアを思いつく
  • 重要なもの、そうでないものがわかる

頭の中にあるだけでは、本番でうまく使えないという事態を招きます。

ぜひ、アウトプットして見える化する習慣をつけましょう。

シンプルな3部構成にする

「つかみ」「本題」「まとめ」で OK

ポイントと目的がある程度明確になったら、組み立てに入ります。

机を整理整頓するときをイメージしてみましょう。

このときに鍵になるのは、実は「引き出し」です。
なぜなら、引き出しの数や大きさは決まっているからです。

結局、どのように整理できるかは、引き出しが決めているのです。

説明の場合も同様です。
まず、3つの引き出しを用意します。

つまり、3部構成にするのです。

構成は、順に「つかみ」「本題」「まとめ」でOKです。

こんなに単純で大丈夫?と思うかもしれませんが、営業では、むずかしいフレームワークや、複雑なスキームは必要ありません。

3部構成にする理由は、そのシンプルさです。

  • 説明が組み立てやすい
  • 聞き手が理解しやすい
  • とっさの説明にも対応できる

引き出しがたくさんあると、整理するときに考えることも多くなります。

また、何がどの引き出しにあるのか、わからなくなるかもしれません。

まずは、3部構成を基本に考えるようにしましょう。

さて、ここで重要なのは、この3つの「つながり」です。

「つながり」が、ストーリーを生み、それがわかりやすさを作り出すのです。

一方、「つながり」がない説明は、バラバラになった紙芝居と同じで意味がわかりません。

構成を「つかみ」「本題」「まとめ」にするだけで、ある程度のストーリーがイメージできるはずです。

説明は「つかみ」が勝負

最初に「つかみ」を考える

説明の組み立てを考えるときは、まず「つかみ」から考えてみましょう。

説明がうまくいくかどうかは、この「つかみ」にかかっています。

「つかみ」の目的は、たったひとつ。

それは「この先を聞いてみたい」という姿勢にさせることです。

説明やプレゼンの上手い人は、間違いなく「つかみ」にこだわっています。

一方で、「つかみ」がイマイチな説明は、そのまま残念な結果に終わることが多いように思います。

「つかみ」は、説明のポイントや目的がぼんやりしていると決まりません。

逆に「つかみ」がイメージできると、「本題」「まとめ」は意外にすんなり決まります。

「つかみ」=「問題提起」と考える

「つかみ」がイメージできない人は、「つかみ」=「問題提起」と考えてみましょう。

問題提起とは、文字どおり、問題や課題を投げかけることです。

ビジネス書などのタイトルで、よく見かけるあのパターンです。

「なぜ、ダイエットは続かないのか?」
「成功者は、なぜ瞑想をするのか?」
「英語が話せない人の共通点とは?」

問題提起は、疑問形、つまり謎かけにします。

謎かけにすることによって、聞き手は「え、どうして?」という関心を抱きます。

『影響力の武器』の著者、チャルディーニは、次のように言っています。

謎には威力があると、チャルディーニは言う。
結末を知りたいという欲求を生み出すからだ。

「『なるほど』と思わせることが大事なことは知っているだろう。
実は、その前に『はあ?』と思わせておくと、『なるほど』の満足度がぐっと増す」

チップ・ハース、ダン・ハース著
「アイディアのちから」

「つかみ」「本題」「まとめ」のパターン

ここで参考までに、組み立てのパターンをいくつか挙げてみます。

何を「つかみ」にするのかによって、いろいろなパターンが考えられます。

【結論から始める基本的なパターン】

いつでもどこでも使える、汎用性の高い基本的なパターン。
特に、見込客にとって予想外、あるいは反対の結論のときは、「つかみ」に結論を持ってきましょう。

意外性のある結論は「つかみ」にうってつけです。

 

【TVショッピングのパターン】

実例を「つかみ」に持ってくることで、「え、どうして?」という関心を起こさせるパターン。実例にインパクトがあると効果的です。

また、あれこれ説明するのより、事例を紹介した方がわかりやすいときにも有効です。

 

【意外性のある展開パターン】

多くの人が信じていること、当たり前だと思っていることを、打ち消すパターン。

インパクトのある「つかみ」になります。

 

【手順などの説明のパターン】

操作の手順、契約の手続きなど、実務的なことを説明する場合は、まず「つかみ」で全体像と流れを示しましょう。

また、最後の「まとめ」で、例外や困ったときの対処法などを説明してあげると、安心してもらえます。

不要なものを捨てる

完璧であるというのは、追加するものがなくなったときではなく、
取り除くものがなくなったときである

サン=テグジュペリ「星の王子さま」著者

わかりやすさの最大のポイントは、とにかく単純明快さ。

そのために、説明の組み立てを考えながら、不要なネタを思い切って捨てていきます。

しかし、営業マンの多くは、それがなかなかできません。

その理由は大きく2つあります。

  1. 伝わらないのではないかという不安
  2. 認められたいという承認欲求

特に、注意したいのが❷の承認欲求です。

知識や経験が増えてくると、それを見込客にアピールしたくなります。

確かに、豊富な情報・知識を持っている営業マンは信頼されます。

しかし、商談で見込客が知りたいのは、自分にとって必要な情報だけです。

地図を使うとき、知りたいのは目的地へのルートだけ、それ以外の地図上の情報は、まったく不要だということです。

とにかく、勇気を出して「捨てる」ことを習慣にしましょう。

とっさの説明力を身につける

ここまで、説明をする前にやるべきことについて考えてきました。

しかし、実際の営業では、準備していない説明を、とっさに求めらることが多くあります。

このとき、必要になるのは、やはり要約力です。

ただし、時間がないので、真っ先に「結論」を考えます。

そして、その「結論」を「つかみ」にして、3部構成で説明するのです。

営業はライブ演奏と同じです。どうしてもアドリブ能力が必要になります。

しかし、ここまでにご紹介した事前の準備を、何度も繰り返していると、脳にその思考回路ができてきます。

これが、とっさの説明にも対応できる「要約力」になるのです。

まとめ

多くの営業マンは常に、伝えたい、理解してもらいたい、と考えているはずです。

しかし、そこで終わらず、「ホントによくわかりました!」と言ってもらえるような説明を目指しましょう。

なぜなら、「わかりやすい説明」は、最強に武器になるからです。

そのためにも、説明をする前にしっかりと頭を整理する習慣を身につけましょう。

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