「わかりやすい!」と、言われる説明をするには、事前の準備が大切です。
しかし、たとえ準備万端整っていても、伝え方、話し方によって、わかりやすさは大きく変わってしまいます。
いかに聞き手の脳に負担をかけない、伝え方、話し方がができるか。
実際の商談では、それが鍵になります。
準備編に続いて、実際に説明するときの基本的なコツをご紹介します。
Contents
説明をするときの基本的な話し方
何について説明するかを伝える
わかりやすい地図、わかりやすい案内板、わかりやすいマニュアル。
わかりやすいものは、パッと見て何を表しているかがわかります。
説明においても同様です。
最初に「何について説明するのか」を、はっきりと伝えましょう。
これは、新聞や週刊誌の見出しと同じです。
こうした見出しのことを「リード」と言います。
「子供ニュース」でおなじみの池上彰さんは、著書の中で次のように言っています。
あらかじめ「今からこういう話をしますよ」と、聞き手にリードを伝えることを、私は “話の「地図」を渡す” と呼んでいます。
「今日はここから出発して、ここまで行く」という地図を渡し、「そのルートを今から説明します」という形をとることで、わかりやすい説明になります。ーわかりやすく〈伝える〉技術ー
「リード」を伝えることで、見込客は、説明の方向性がわかります。
しかし、それを伝えず、説明に入ってしまう営業マンは意外に多いように思います。
3年保証っていうのは…
これだと、見込客は聞くための準備ができません。
最初にきちんと「リード」を伝えることで、自然に聞くための準備ができます。
その3年保証について説明しますね。
さらに、この「リード」を、問題提起になるよう疑問形にしてみましょう。
また、説明の目的・ゴールも伝えておくと、目的意識を持って説明を聞いてもらえるはずです。
では「3年保証にしたら、いったい何が得なのか?」それを今から説明しますね。
今度は、見込客に投げかけてみましょう。
でも、「3年保証ってホントにお得なの? 」なんて思いませんか?
そのあと、必要かどうかご判断ください。
投げかけることによって、見込客は当事者意識を持ちやすくなります。
一文を短くして「間」を作る
話し方や文章術に関する書籍には、必ずといっていいほど、一文を短くしましょう、と書かれています。
確かに、一文が長くなると、情報量が多くなり、主語と述語の関係も、ややこしくなったりします。
おまけに、「えっと、なんの話やったっけ?」と、しゃべっている本人が迷子になってしまうという悲劇も起こりがちです。
事例を挙げてみましょう。
保険証券を確認したところ、まず気になったのは、多くの特約が付いていることで、実際に内容を見てみると、同じような特約が2つあったり、古いタイプの特約だったりするので、保険料を無駄にしないためにも、一度見直した方がいいと思います。
意味はわかります。
しかし、聞いている方は息ができず、間違いなく呼吸困難になります。
保険証券を確認しました。
まず気になったのは、多くの特約が付いていることです。
実際に内容を見てみると、同じような特約が2つあったり、古いタイプの特約だったりします。
なので、保険料を無駄にしないためにも、一度見直した方がいいと思います。
どうでしょうか。
読点「。」で短く区切るだけで、圧倒的にわかりやすくなりました。
しかし、一文を短くすることには、もっと大きな意味があるのです。
それは、「間」ができることです。
例えば、「〜です。」と話を切ると、そのあとに一瞬ですが「間」ができます。
キャッチボールに例えると、この一瞬の「間」は、見込客にボールを投げたことになるのです。
実際にやってみるとわかりますが、「〜です。」と話を切ると、見込客は、相槌を打ったり、うなずいたりして、ボールを返してくれるはずです。
もし、なんの反応がなくても、心の中ではちゃんと相槌を打っています。
まず気になったのは、多くの特約が付いていることです。
また、「間」を作ることで、会話のテンポが良くなり、とても聞きやすくなります。
余談ですが、何かの本に、「間」のない話し方をする人のことを、マヌケ(間抜け)と呼ぶ、って書いてありました(笑)
接続詞で方向性を示す
接続詞とは、「先の話を受け、それに続く話の展開の方向性を示すもの」です。
接続詞を使うことで、聞き手は次に話がどう展開するのかを推測することできます。
つまり、話を受け取る準備ができるのです。
次の2つを比べてみましょう。
終身保険は、保障が一生涯続くので安心です。貯蓄性があるので、老後の資金作りの助けにもなります。定期保険は、保障期間が決まっています。貯蓄性もありません。保険料は安く抑えることができます。
終身保険は、保障が一生涯続くので安心です。しかも、貯蓄性があるので、老後の資金作りの助けにもなります。それに対し、定期保険は、保障期間が決まっています。また、貯蓄性もありません。しかし、保険料は安く抑えることができます。
どちらも、一文は短くなっています。
しかし、わかりやすさには大きな違いがあります。
接続詞を使うことで、飛躍的にわかりやすくなります。
「一文を短く」+「接続詞」は、最強のコンビなのです。
少しパターンは違いますが、もう1つ事例を挙げます。
見込客が「値段が高い」と言ったときの反対処理のケースです。
「確かに値段は高いですが、それ以上の価値はあります。」
「確かに値段は高いです。しかし、それ以上の価値はあります。」
「が」という助詞で、文をつないだ場合と、2つの文に分けて「しかし」という接続詞でつないだ場合です。
どちらの方が説得力あるでしょうか。
また、「値段が高い」という反対を、しっかりと認めているのはどちらでしょうか。
接続詞の重要性について、あまり言う人はいません。
しかし、わかりやすい説明をするためには、必要不可欠なものなのです。
簡単でわかりやすい言葉を使う
当たり前のことですが、見込客の理解力はコントロールできません。
また、どの程度の理解力があるのか、それを判断するのも困難です。
ですから、できるだけ簡単でわかりやすい言葉を使うことが、必要不可欠になります。
特に、専門用語には注意が必要です。
社内で使っている専門用語を、商談で使うのはやめたほうが無難です。
僕は、小学生でもわかる言葉を使うべきだ、と思っています。
もし、むずかしい言葉を使わざるを得ないときは、その言葉を翻訳してあげましょう。
その一方、言葉の意味はわかっても、理解できないときもあります。
さらに、カタカナ用語にも注意が必要です。
なんとなくカッコいいので使いたくなりますが、わからない人にはさっぱりわかりません。
また「仮定 / 過程」「機械 / 機会」など、いわゆる同音異義語が原因で、見込客が迷子になってしまうときがあります。
確認を取りながら進める
授業中、先生は、よく「ここまでは大丈夫か?」とか「なんかわからんことあるか?」と、生徒に聞きます。
先生が確認を取るのは、生徒は「ちょっとわかりません」とは言わないからです。
これは、見込客もまったく同じです。
少々、わからないことや疑問があっても、「わかりません」と、言ってくれることは、ほとんどありません。
それをいいことに、先へ、先へと説明を進めると、「こいつの話は、ようわからんわ」ってことになります。
たまに、自分の話に酔って、見込客をほったらかしにするナスシスト型営業マンに遭遇しますが、こうなるともう犯罪レベルです。
自分の説明を過信せず、理解してもらえたか、何度も確認を取る習慣を身につけましょう。
説明が圧倒的に上達する練習方法
極端に短い時間で説明する練習
シリコンバレー発祥と言われる「エレベーターピッチ」というプレゼン手法があります。
聞いたこともあると思いますが、エレベーターに乗っている15秒から30秒の間に、投資家に自分のアイディアを売り込む、というもの。
とっさの説明を求めらることも多い営業では、「要約力」が必要です。
これは、その「要約力」を磨くためのトレーニングとして最適なのです。
まず、「極端に短い時間で説明する」と想定すると、何がポイントなのか、を考えざるを得ません。
また、無駄な話や、言い回しはできなくなります。
通常、10分で説明している内容なら、それを3分にして練習してみましょう。
時間を短くしても、ちゃんと伝えることができるか、を練習するのです。
この練習を営業マンにやってもらうと、やたら早口になる人がいますが、早くしゃべる練習ではないのでご注意を!
実際に練習してみると、自分でも気づいていなかった課題に、気づくことができると思います。
書きながら説明をする練習
パンフレットやパワポなどのツールを使って、説明している営業マンも多いと思います。
それらを一切使わず、レポート用紙などに書きながら説明をする練習です。
イメージとしては、黒板を使って説明する学校の先生と同じです。
このトレーニングも、「要約力」を身につけるためものです。
これを、繰り返し練習をすると、説明を図解で考えるようになります。
また、「重要なポイントは何か」「キーワードは何か」ということも、自然に考えるようになり、「要約力」がアップします。
しかも、この方法は、そのまま実際の営業でも使えます。
やってみると、びっくりするほどの効果を体感できると思います。
わかりやすくなるだけでなく、見込客は「何を書くのだろう」と、説明に集中してくれるのです。
地図を使って道を教えてもらうより、書いて説明してもらう方が、圧倒的にわかりやすいのと同じです。
ぜひ、チャレンジしてみてください。
まとめ
わかりやすい!と言ってもらえる説明をするための、基本的なコツをご紹介しました。
説明やプレゼンの仕方には、もっと高度なテクニックもあります。
しかし、それに飛びつく前に、まず基本的なことを身につける方が大切です。
ちょっとしたことで、飛躍的にわかりやすい説明になります。
裏を返せば、ちょっとしたことで損をしているかもしれません。
ただ、伝える、理解してもらうではなく、もう一段高い「わかりやすい!」と言ってもらえるレベルの説明を目指しましょう。
それを言ってもらえる説明ができたとき、商談は間違いなく成功しているはずです。