アポイントと取ろうとすると「またこちらから連絡します」と言われる。
商談では最後に「ちょっと考えてまたお返事します」と言われる。
結局、それ以降は連絡が取れない…。
残念ながら商談ではよくあるパターンですよね(涙)
どちらも最後の詰め、クロージングの仕方に問題があります。
このクロージングをすんなりと決めることができる営業テクニックがあります。
それが「二者択一話法」です。
誰もが知っているこの技法、バカにしてはいけません。
今回はこの二者択一話法を取り上げます。
二者択一話法とは?
二者択一話法の基本
二者択一話法とは何か、というと基本形は、YESかNOは聞かないで、「Aにしますか?それともBにしますか?」と聞くシンプルな質問技法です。
「Aにしますか? それともBにしますか?」
たとえば、あなたが会社で同僚と一緒にランチに行きたいと思ったとします。
そのときに、「一緒にランチ行かない?」とは聞かずに、
「お昼はラーメンにする?それともカレーにする?」と聞くのです。
これ、いったい何がスゴいのでしょうか。
二者択一話法では、一緒にランチに行ってくれるかどうかについては確認しないのです。
なぜなら、相手がどちらを選択しても、一緒にランチに行くことになるからです。
つまり、二者択一の質問は一緒にランチに行くということが前提になっているのです
前提(ぜんてい)とは、ある物事が成り立つために、あらかじめ満たされていなければならない条件のこと。 -wikipedia-
この場合、目的はラーメンを食べることでも、カレーを食べることでもありません。
一緒にランチに行くことなのです。
相手にはラーメンかカレーかを選択させておき、一緒にランチに行くことは暗黙のうちに同意させているわけです。
つまり、断られるというリスクを回避しているのです。
ちょっとずる賢い感じもしますが、これが二者択一話法といわれるものです。
二者択一の心理的効果
「Aにしますか?それともBにしますか?」と聞かれると、人は思わずどちらかを選んでしまう傾向があります。
実際、次のような実験結果があるみたいです。
被験者に時計の絵を見せる。
針は10時を指している。
そこで絵を隠し、
「時計は何時を指していましたか?」と質問する。
この場合さすがに正解率は高い。
しかし、
「時計は10時でしたか?2時でしたか?」と
二者択一で問うと正解率が落ち、
さらに「9時でしたか?3時でしたか?」と問うと、
ほとんどの被験者はどちらかを選んでしまって
正しい時刻を答えられなかった。
樺旦純著「ダマす人、ダマされる人の心理学」
ただし、タイミングが唐突すぎたり不自然だったりすると、選択を拒絶される場合があるので注意が必要です。
見込客の心理的な負担を軽減する
二者択一話法には、もうひとつ優れている点があります。
それは聞かれた相手は2つの選択肢から選ぶだけなので、あれこれ考えるストレスがないという点です。
もし、二者択一話法を使わなければ「お昼は何を食べたい?」というように、相手に丸投げ状態になります。
すると、聞かれた相手は「自分が決めなければならない」というと負担を負うことになります。
考えたり、決めたりすることは結構ストレスです。
ストレスを感じると人は抵抗の少ない楽な方法に逃げようとします。
営業の場面であれば、断って済まそうとするのです。
商談を思うように進められない残念な営業マンは、見込客に気を遣い過ぎて、なんでも好きなように決めてもらおうとする傾向があります。
しかし、それは結果的に見込客にストレスを与えているだけです。
二者択一話法は、見込客にそうしたストレスをかけずに、営業を進めていくことができる技法なのです。
実際の商談で使いこなす
推定承諾とセットにする
二者択一話法は、暗黙の同意を得ることができるテクニックなのですが、いざ商談で使おうとするとちょっとした勇気が必要になります。
というのも「そもそも、そんな気はない」と否定されるのではないかと不安になるからです。
そんな不安を感じることなく、簡単に使える方法をご紹介します。
それは、二者択一の前に「もし〇〇なら…」という言葉をつけるのです。
つまり、前提を言葉にして伝えるのです。
これは、推定承諾という話法なのですが、あくまでも仮の話として質問するので、見込客が違和感を感じることもありません。
先ほどのランチに誘う場合であれば、
「もし、今日一緒にランチ行くなら、ラーメンにする?それともカレーにする?」
と質問するのです。
「もし、〇〇なら、Aにしますか? それともBにしますか?」
二者択一話法をストレートに使って、暗黙の同意を得る場合と比較して、よりマイルドで自然な感じになりますが、効果の面ではあまり大差はありません。
さて、この二者択一話法は商談のどこで使えばいいのでしょうか。
実はどこでも使えますが、ここでは是非使ってもらいたい2つの場面をご紹介します。
アポ取りで使う
アポイントが取れるかどうかは営業マンにとって死活問題ですよね。
このアポ取りは電話であっても対面であっても、二者択一が基本中の基本です。
「ぜひお会いしたのですが、いかがでしょうか?」とは聞きません。
日程を二者択一にして見込客に選択させ、会うことは暗黙のうちに同意させるのです。
二者択一を使ったアポ取りの実例をあげましょう。
「ぜひ一度お会いしてお話したいのですが、もしお会いできるとしたら、今週と来週のどちらの方がよろしいですか?」
「どちらかというと来週ですね」
「来週ですね。ありがとうございます。来週でしたら前半と後半、どちらがよろしいでしょうか?」
「前半の方がいいね」
「ありがとうございます。では月曜日の午前10時と、火曜日の午後1時でしたらどちらの方がよろしいですか」
二者択一の3連発。
まるでYES・NOチャートのようですが、コツは大きめの選択肢から始めて少しずつ狭めていき、最後は自分のスケジュールを優先してピンポイントで指定することです。
慣れて自信がつけば、3連発もやらなくてもちゃんとアポイントが取れるようになります。
二者択一はこれ以外でも、例えば「午前中か、午後か」「平日か、休日か」「仕事中か、終わってからか」などのように自由に設定できます。
また日時ではなく、まず面会する場所を選択させて、その後に日時を選択させるということもできます。
「もしお伺いするとしたら、ご自宅がよろしいでしょうか?それとも会社がよろしいでしょうか?」
「自宅に来てもらったほうがいいかな」
「ご自宅ですね。ご自宅にお伺いするとしたら、平日と休日、どちらの方がよろしいですか?」
残念ながら営業マンのアポ取りを聞いていると、「いつがよろしいですか?」とか、「どこでお会いしましょうか?」などと見込客に丸投げしている人が圧倒的に多いように思います。
それではアポイントが取れる可能性は極端に低くなります。
もし見込客に「こちらからまた電話します」と言われて終わっているならそれが原因です。
ちなみに、僕がいた外資系保険会社では、キャリアの長いトップクラスの営業マンであっても、基本通り二者択一話法を使ってアポイントを取っている、ということも付け加えておきます。
クロージングの場面で使う
アポ取りに続いてもうひとつ使ってもらいたい場面があります。
それは商談の最後のクロージングの場面です。
クロージングはドキドキしますよね。
しかし、緊張しているのは営業マンだけではありません。見込客も同様です。
この緊迫した局面で上手くクロージングができないというのであれば二者択一話法を使ってみましょう。
クロージングで使う場合は「もし購入されるとしたら」「もし契約されるとしたら」という前提を入れた推定承諾とのセットで使います。
ちなみにプレゼンテーションが終わってクロージングに入る前には、必ず「説明は以上です。何かご質問はありますか?」と確認を取ってください。
質問があればそれに答えてからクロージングに入ります。
実例をあげます。
「説明は以上ですが、何かご質問はありますか?」
「いえ、よくわかりました。」
「ところで、もし購入されるとしたら、お支払いは一括にされますか、それとも分割にされますか?」
「一括にします」
「一括ですね。保証期間は1年されますか、それとも3年にされますか?」
「保証は1年でいいです。」
「わかりました。ではその内容で契約書を作成してもよろしいでしょうか?」
もちろん、途中で見込客が反対してくることもあります。
その場合は、その反対を処理して、また二者択一のクロージングに戻るようにしましょう。
これをパターン化して、常に同じ手順でクロージングができるようになると、いつも感じていた嫌な緊張から解放され、自然な流れで成約に至ると思います。
まとめ
営業では、見込客を積極的にリードしていくことが重要です。
二者択一話法は、見込客に不信感を抱かせずにリードしていくことができる非常に優れた技法なのです。
実際に商談で使う場合は、事前に二者択一のトークを作っておきましょう。
- AかBかを選択させながら、暗黙の同意を得る
- 選択肢を示し見込客の心理的な負担を軽減する
- 「もし〇〇なら…」という推定承諾とセットで使う
今回はアポ取りと、最後のクロージングの場面での使い方をご紹介しましたが、二者択一話法はそれ以外の場面でも効果を発揮します。
ぜひ自分で考えていろいろ試してみてください。その威力に驚くはずです。