営業スキル

信じたら危ない営業手法 3選

営業の世界には、正しいと信じられている営業手法、というものがあります。

多くの場合、こうした手法は上司やマネージャーから教えられます。

しかし、その中にはやる要がないものがあります。

必要がない、というより、ただ漠然とやっていたらかなり危険です。

今回は、そんな迂闊に信じたら危ないノウハウを3つ取り上げます。

その3つとは、

  1. 雑談で場を和ませてから、商談に入りましょう
  2. 自己紹介で、まず自己開示しましょう
  3. 人間関係を作ってから、営業をしましょう

どれも一昔前までは意味のあるものでした。

しかし、今は人の価値観が変わってしまっています。

つまり、これらはかなり難易度の高い手法になっているのです、

言い換えると、多くの営業マンにとっては、墓穴を掘る可能性が圧倒的に高いのです。

(注)オンライン営業は例外ですので、ご注意を。

① まずは雑談(世間話)から始める

本題に入る前に、まず雑談から始めましょう、というのは、なぜか営業の世界では常識になっています。

その目的は、すぐに本題に入ると見込客が警戒心を強めてしまう、
だから、まず雑談で、お互いに打ち解けてから本題に入りましょう、というもの。

実際、営業研修などでは、

「趣味や、時事ネタなど、見込客の興味のある話から始めましょう」

「お客様のオフィスや自宅にあるものを、よく観察してネタにしましょう」

などと教えられます。

結論からいうと、まったくナンセンスです。

その理由は、

  • 営業の常套手段だとバレている
  • 実は多くの見込客は雑談が苦手
  • 必要なのは、聞く姿勢になってもらうこと

雑談は営業の常套手段だとバレている

「営業マンは、まず雑談で場を和ませようとしてくる」

残念ながら、これは、もう誰もが知っています。

つまり、営業マンの常套手段だというのはバレています。

そのため、表面上は打ち解けたように見えても、実際には「どこで、仕掛けてくるのか」と見込客が警戒心を緩めることはありません。

それが証拠に、雑談で打ち解けたように見えても、いざ本題に入ろうとすると見込客は、一瞬で元の状態に戻ってしまいます。

つまり、よほどの達人でもない限り、雑談で打ち解けるのはかなりハードルが高いのです。

実は、多くの見込客も雑談が苦手である

雑談が得意だ、という人は多くありません。

初対面の場合は、特に苦手だという人の方が圧倒的に多いと思います。

裏を返せば、見込客の多くも雑談は苦手だということです。

雑談の苦手同士が雑談して、打ち解けることは100%ありません。

結局、お互いにとって、とても苦痛な時間になりがちなのです。

最後には間が持たなくなって、

「お時間もあれなんで、本題に入りたいのですが・・・」

と、なってしまうのです。

見込客は、雑談から解放されて内心ホッとしているはずです(泣)

重要なのは、聞く姿勢になってもらうこと

商談のオープニングに必要なのは、見込客と打ち解けることではありません。

聞く姿勢になってもらうことです。

その決め手になるのは、まずあなたの印象です。

雑談のネタで悩むくらいなら、印象力を磨くほうがはるかに価値があります。

見た目、立ち振る舞い、声、話の受け答え、など、自分が相手にどのような印象を与えているのかを、常に意識しブラッシュアップし続けることが大切です。

もうひとつ必要なものがあります。

それは、計算されたシナリオです。

計算されたとは、会話の展開と、見込客の感情の動きを予測して考えられたもの、という意味です。

もちろん、その目的は「聞いてみよう」と思ってもらうことです。

優秀な営業マンは、一見、雑談しているように見えても、それは計算されたものなのです。

計算された雑談は、雑談とは言いません。

一方、営業マンの大半がやっている雑談は、ほとんどアドリブで、その名の通り「雑な話」で終わっています。

営業マンであれば、自分の言動のすべてに意図がなければならないのです。

無理なことはやらないこと

雑談で、見込客の警戒心を解くことは多くの営業マンにとって至難の技です。

無理してやっても、結局、墓穴を掘るだけです。

ならば、やらないことです。

やらなくても、結果は変わりません。

むしろ、見込客の好感度は上がるはずです。

きちんと挨拶して、感謝の意を示し訪問の目的を伝える。

正々堂々としていれば、雑談で打ち解ける必要などまったくありません。

実際、生命保険会社でマネジャーをしていたとき、新人に教えていたのは、次のようなオープニングでした。

今日はお時間いただきありがとうございます。

お電話でお話したように、私は、生命保険の営業しています。
なので、皆さんに生命保険にご加入いただくことが私の仕事です。

ただ、今日は、そんなお話ではありません。
お話したいのは、生命保険の仕組みとその考え方の2つだけです。

聞いていただければ、生命保険のイメージがガラリと変わる、というお話です。
なので、ぜひ気楽にお聞きください。

ぎこちない雑談をするくらいなら、ストレートに本題に入った方が絶対にいい、という確信が僕にはあります。

いずれにせよ、まずは雑談で打ち解ける、という思い込みは、綺麗さっぱり忘れるべきです。

② ます自己紹介で自己開示する

自己紹介はただの自己満足

まずは自己紹介で自己開示を!

これも信者が多い手法のひとつになっています。

ちょっとした軽いものならまだしも、「プレゼンか!」と思うような自己紹介をしている営業マンが結構います。

自分の経歴や、入社した経緯、趣味、家族構成、仕事に対する思い…

こうしたことを伝えると、「そういう人なんだ」と見込客は安心し、返報性の原理で自ら自己開示してくれる。

もし、共通点があれば親近感がわき、距離がグッと縮まる。

これが自己紹介推奨派の考えのようです。

結論からいうと、ただの自己満足、です。

こういうと、

「いや、結構、盛り上がるんですよ」とか、「場が和むんですよ」と反論されることがあります。

でも、それは、見込客がつきあってくれただけで、多くの営業マンは、ただの「ハダカの王様」になっている可能性大です。

優秀な営業マンなら、次のように考えるはずです。

  • 自己紹介を、うっとおしいと感じる人がいる。
  • 誰がどうみても、ただの売り込みである。

自己紹介をうっとうしいと感じる人がいる

自ら、自己紹介を買って出るようなタイプ(仲間内ではアピラーと呼んでました)を、生理的に受けつけないという人は一定数存在します。

控えめにいいましたが、かなりの数、存在していると思います。

つまり、そこには、リスクがあるということです。

おそらく、優秀な営業マンなら、たとえ10人中、9人が問題なくても、たった1人が嫌がる可能性があるならやらないと思います。

もちろん、営業では、最大公約数を取ることも大切ですが、自己紹介でリスクを取る必要はありません。

自己紹介で、貴重な商機をふいにするようなことは、優秀な営業マンであれば絶対に避けるはずです。

誰がどうみても、ただの売り込みである

自己紹介推奨派の人たちは、「自己紹介は、決して自慢にならないように」と言います。

しかし、自己紹介はその構造上、「自分を知ってください」というアピール以外の何ものでもありません。

なので、聞き手にとっては、自慢にしか聞こえないのです。

逆に、なんのアピールもない自己紹介を聞かされても、「ふーん、それで?」となるだけです。

興味があれば質問してくれる

優秀な営業マンは、自分のことは商談の中でさりげなく伝えています。

また、見込客が自分に興味を持てば、ちゃんと質問してくれることも経験上わかっています。

そして、見込客に聞かれたときに、自分のことを話しているのです。

つまり、自分の話をするのは、自分を買ってもらってから、というスタンスなのです。

商談はまず自己紹介から、という先入観は「百害あって一利なし」なのです。

③ まずは人間関係を作ってから

営業する前に、まず人間関係を構築すること。

これ、間違ってます。

人間関係を作ってから営業する、というスタイルを信じていると、いつまでたっても業績は上がりません。

実際、優秀な営業マンは、よほど難易度の高いターゲットでもないかぎり、営業できるチャンスがあれば、すかさず商談のテーブルに乗せようとします。

理由は簡単です。

  • ビジネスに必要なのは信頼関係
  • 人間関係があるほうが、実は売りにくい

ビジネスに必要なのは信頼関係

人間関係は、そう簡単には築けるものではありません。

「人間関係ができた」と言ってる営業マンも、実はただの片思いということがほとんどです。

そもそも、営業に人間関係は必要ありません。

営業は、ビジネスです。

ビジネスに必要なのは、人間関係ではなく、信頼関係です。

もちろん、見込客もそれを望んでいます。

実は、このスタイルにハマっている営業マンは、人間関係=信頼関係、と、勘違いしています。

人間関係と信頼関係は、まったく違います。

人間関係があるほうが売りにくい

あなたは、まったく知らない人に営業するのと、親しい友人に営業するのと、どちらがやりやすいでしょうか?

親しい知人、友人には営業したくない、と思っている営業マンの方が、圧倒的に多いはずです。(生命保険など最たるものです)

理由は簡単です。

営業することによって、もし万が一、人間関係が崩れたらどうしよう、と考えるからです。

ということは、人間関係をつくってから営業する、というのは、わざわざ売りにくい関係にしてから営業をしていることになります。

実際、「ぼちぼち商談のテーブルにのせたい」と思っても、タイミングが掴めないはずです。

それは当たり前のことで、「それが目的で付き合ってたんか」と、思われるのではないかという不安が拭えないからです。

結局、いつまでたっても、営業できないままの状態が続くだけです。

まとめ

今回取り上げた「雑談」も「自己紹介」も「人間関係の構築」も、まったく無意味だと言っているわけではありません。

一昔前までは、たしかに有効な手法だったと思います。

しかし、営業は常に見込客の視点に立って考えなければなりません。

その見込客の価値観は、インターネットや、SNSの普及によって、大きく変わってきています。

自分にとって、有益な情報なのか、そうでないのかをできるだけ早く判断したい、と思っています。

そうした変化を意識しながら、目的と手段を考えなければなりません。

当たり前だと思っていること、これでいいと信じていることに対して、これは今の時代にマッチングしているのだろうか、と検証する必要があると思います。

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