営業は、さまざまなスキルが求めれらます。
しかし、あまり複雑に考える必要もありません。
結局は、人と人の織りなす営みなので、その原理原則はいたってシンプルです。
その中で、もっとも基本的なことは、「嫌われたら、おしまい」です。
「いや、当たり前でしょ!」と思うかもしれませんが、しかし、嫌われていることを自覚するのは、実はとてもむずかしいことなのです。
さらに、なぜ嫌われたのかを理解するのは、もっとむずかしいのです。
(実際、ほとんどわからない)
今回は、営業マンがよく使うフレーズの中から、「それ、嫌われますよ」というものを、5つ選んでみました。
これらは、口癖になっているケースが多く、無意識に使ってしまっている可能性もあります。
知らない間に、見込客を不快にしているかもしれませんので、ぜひ参考にしてみてください。
❶ すいません
商談で、「すいません」を使ったら即アウト、というわけではありません。
関係性によっては、ほとんど問題にならないケースもあります。
しかし、営業マンであれば、「すいません」「すみません」は、いずれも敬語ではない、ということは認識しておくべきです。
実際、どこか軽い感じがして、心がこもった感じには聞こえません。
「すいません」は、謝罪、感謝、依頼の3つの意を表すときに使いますが、できれば違う言葉で伝えられるようにしておきましょう。
謝罪の意を表す
「申し訳ございません」
「お詫びいたします」
感謝の意を表す
「ありがとうございます」
依頼するとき
「恐れ入りますが」
「申し訳ありませんが」
この「すいません」が厄介なのは、これが反射的な口癖になりやすいことです。
何かにつけ「すいません」を連発し、中には意味不明な挨拶になっている営業マンもいます。
過去、数多くの営業マンを見てきましたが、「すいません」が口癖になっている営業マンで、売れている人はいません。
これは、見込客の立場になって考えてみればわかります。
やたらと「すいません」を連発する営業マンを信頼して、何かを任せようと思う人がいるでしょうか。
おそらく、いないはずです。
こうなってしまうのは、見込客に対するスタンス(立ち位置)が低いからです。
スタンスが下がってしまう理由は、大きく2つあります。
- 見込客を必要以上に恐れている
- 営業に対して罪悪感やうしろめたさがある
もし、こうした自覚があるのなら、営業という仕事の本質を、一度真剣に考えてみる必要があるかもしれません。
いずれにせよ、ちょっと頑張って「すみません」は封印してしまいましょう。
❷ とりあえず
「とりあえず」も、多くの営業マンが使っているフレーズです。
しかし、普段使いでは非常に便利なこの言葉も、営業となると話は別です。
そんな意図がなくても、いい加減な感じに受け取られ、場合によっては不信感を抱かせてしまいます。
ちなみに、この「とりあえず」も敬語ではありません。
また、これと同じニュアンスでよく使われるのが、「一応」です。
「一応」には、「念のため」という意味もありますが、「十分ではありません」という意味というもあります。
使い方を間違えると、どこか「テキトーにやった」といったニュアンスになってしまいます。
もし使うのであれば、「まず」とか「ひとまず」といった言葉にした方が、怪我が少なくて済みます。
❸ たぶん、~です
「たぶん、~です」を営業で使ってしまうと、良くてイエローカード、下手すると一発レッドで退場になります。
しかし、これまた意外に多くの営業マンが使っています。
これは、「私、仕事できない人なんです」と、自らアピールしているようなものです。
営業は、直接お金をいただく仕事です。
なので、もっとも避けなければならないのは「あいまいさ」です。
あいまいな説明や回答は信頼を得られないだけでなく、時には苦情にまで発展することもあります。
ちなみに、「多分、〜ですが、念のため確認します」ならオッケーですよね、といった質問を結構もらいます。
確かにこれなら問題なさそうに思えます。
しかし、「多分、〜ですが、念のため確認します」と言っておいて、その後に「確認したらダメでした」となったらどうでしょうか。
見込客によっては、「なんやねん!」と思うはずです。
あいまいな期待を持たせないことも、信頼関係を築く上では重要なポイントだと思います。
明確に回答できないときは、それを素直に認めて対処すべきです。
それについては確認させていただけますか?
ちなみに、「多分、~です」を平気で使う営業マンは、実務においても自分の憶測だけで仕事を進め、あとでえらい目にあう、といった傾向がありますので念のため。
❹ なるほど
「なるほど」は、少々危険なワードです。
使い方にもよりますが、無神経に使うと墓穴を掘ってしまいます。
何が危険なのか、というと偉そうに聞こえやすいのです。
さらに、これが腕組みとセットになると最悪です。
「お前、何様のつもり」と思われてしまうこと間違いなしです。
なので、少なくとも目上の人、年上の人にはNGにしておくべきです。
特に注意が必要なのは、「なるほど、なるほど」と、重ねてあいづちを打つ癖がある人です。
実際、これを連発して、顧客に激怒された苦い経験が僕にはあります。
ちなみに、「なるほどですね」という言い方をする人もいますが、これは日本語的におかしいので使わないようにしましょう。
❺ さすがですね
営業研修などでは、よく「相手をほめましょう」と教えられます。
そこでよく紹介されるのが、「営業さしすせそ」です。
これは、ほめ言葉の頭文字をとったもので、以下のようになります。
- さ…「さすがですね」
- し…「知りませんでした」
- す…「すごいですね」
- せ…「センスがいいですね」
- そ…「そうなんですか」
さて、これは本当に正しいのでしょうか。
別に否定するわけではありませんが、おそらく営業センスのある人なら、これを見て「ん?」と思うはずです。
実際、迂闊に信じて使うと、一瞬で見込客を不快にさせてしまう可能性「大」です。
実は、営業で相手をほめるのは、トップ営業マンでもかなり神経を使う繊細な行為なのです。
なぜなら、「ほめる」という行為自体が「評価する」ことなので、どうしても上から目線になってしまうからです。
特にこの中にある、「さすがですね」は爆弾です。
ノリノリの営業マンがよく使いますが、かなり危険なフレーズです。
優秀な営業マンであれば、まず使いません。
「さすがですね」には、かなりの上から目線感があります。
人によっては、「バカにされた」と感じることもあるので、営業では使用禁止にしておくのがベストです。
その代わりに、「素敵ですね」を使ってみてはどうでしょうか。
経験上、かなりの確率で喜んでもらえます。
ついでに言っておくと、「センスがいいですね」も、同じ理由で小型爆弾くらいの危険度があります。
どうしても使いたいのなら、「センスが違いますね」くらいにしておきましょう。
自覚するための方法
ここでご紹介したフレーズは、意識さえできれば改善します。
しかし、それ以前に自分のコミュニケーションのパターンや癖を、自覚できていない営業マンが多いのです。
そのため、せっかく誰かに指摘されても、本人は腑に落ちなかったりします。
何ごとも、本人に自覚がなければ改善のしようがないのです。
そのための方法を2つ挙げてみます。
- 人の会話のパターンや癖をよく観察する
- ロープレを録画して自身で何度も見る
誰かと会話をするときに、少し意識して話し方を観察してみましょう。
特に、営業される側になったときはチャンスです。
「なぜそう感じるのだろう」という視点を持って観察することで、学べることがたくさんあるはずです。
もうひとつは、自分の会話のパターンや癖を自分で確認することです。
営業マンであれば、1度はロープレを録画して自分を見てみることお勧めします。
「百聞は一見に如かず」です。
会話だけでなく、さまざまな気づきがあるはずです。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
商談では、見込客は営業マンをさまざまな視点で「値踏み」をしています。
特に、高額なものを買うときにはその傾向は強くなります。
商品力や価格競争力だけで、商談が決まるわけではないのです。
何気なく使っているフレーズや言葉が見込客を不快にさせ、それが原因で商談がうまくいかない、といったことは頻繁に起こっています。
ビジネスにおいて、「言葉の使い方」はとても重要なのです。
せっかくの知識やスキルがあっても、思いもよらないところで嫌われてしまうのは、とてももったいないことです。
もし、思いたるフシがあるなら、ぜひ改善してみましょう。
言葉の使い方ひとつで、あなたの印象はガラリと変わるはずです。