たとえ話のコツを教えてください
多くの営業マンから、よくもらうリクエストです。
確かに「たとえ話」には、聞き手の理解度や納得度を、桁違いに変える力があります。
そして、「わかりやすい」とか「アタマが切れるね」などと言ってもらえたりもします。
僕もたとえ話をよく使いますし、武器にしているという自覚もあります。
でも、コツは?と聞かれると、何がコツなのかよくわからないのです。
おそらく、たとえ話に必要なのはコツではなく、そのための「思考回路」だと思うのです。
それを作るには、自分の頭を使って考え続ける以外に方法はありません。
ただ、何をどう考えたらいいのかわからない、という人も多いんじゃないかと思います。
なので、この記事では、そのヒントになるシンプルな考え方を提供したいと思います。
局地的、部分的な説明にはなりますが、たとえ話が苦手という人には、かなり役に立つと思います。
たとえ話の威力は強力です。
使いこなせるようになると、商談やプレゼンの成功率は間違いなくアップします。
※この記事では、何かにたとえることを、すべて「たとえ話」とします。
Contents
「たとえ話」とは何か
「たとえ話」で検索すると、直喩、暗喩、擬人化、メタファーなど、やたらとむずかしい言葉が出てきます。
ただ、なにも試験を受けるわけではないので、それらは無視しておきましょう。
まず、「たとえ話とは何か」を言語化しておきます。
ある事柄をわかりやすくするために、他のことを引き合いに出していう話
weblio辞書
「だから何?」って感じだと思いますが、実は、この中に超重要なキーワードがあります。
それは、「わかりやすく」です。
そうなのです。
たとえ話は、わかりにくい事柄を伝えるとき、あるいは、もっとよくわかって欲しいと思うときに使うものなのです。
あたり前のことのようですが、必要のない場面で意味不明な「たとえ話」を披露し、聞き手を唖然とさせる人はそこそこいます。
たとえ話とは、
わかりにくいことを、スパッとわかってもらうもの
なのです。
何かにたとえたとしても、そこに「わかりやすさ」がなければ、たとえ話とは言えないのです。
AをBで伝える
まず、たとえ話の構造から考えてみましょう。
とはいっても、
AをBにたとえる
ただこれだけです。
たとえば、会話(A)をキャッチボール(B)にたとえる、などです。
AとBには、共通点、類似点があればいいだけです。
なのに、実際にたとえ話をしようとすると、「?」ってことになってしまうのは、どうしてなのでしょう。
実は、共通点、類似点があるというだけでは、たとえ話にはならないのです。
たとえ話は「わかりにくいことを、スパッとわかってもらうもの」でした。
そのため、共通点、類似点が、その「わかってもらいたいこと」を、スパッと表すものでなければ、聞き手にとっては意味不明になってしまうのです。
単に「AをBにたとえる」という思考だと、そこがズレたり、ぼやけたりする可能性が高いのです。
それを踏まえて、たとえ話の構造を以下のよう再定義してみましょう。
AをBで伝える
この場合、Aは「わかってもらいたいポイント」になります。
前述の「会話」の例を考えてみましょう。
「AをBにたとえる」
会話(A)をキャッチボール(B)にたとえる
一方、「AをBで伝える」だと、たとえば次のようになります。
「AをBで伝える」
交互に話す重要性(A)を、キャッチボール(B)で伝える
話を聞くことの大切さ(A)を、キャッチボール(B)で伝える
どちらも、会話をキャッチボールにたとえていますが、話す内容もオチもまったく違ったものになるはずです。
この「AをBで伝える」という点を、まずは押さえておきましょう。
たとえ話はイメージの共有
ところで、たとえ話を使うと、なぜスパッとわかってもらえるのでしょうか。
それは、聞き手は言葉ではなく「イメージ」をつかみ取るからです。
言い換えると、言葉をイメージに変換するのがたとえ話、とも言えます。
ここが、たとえ話最大の「キモ」です。
もし、相手にイメージが湧かなければ、たとえ話はジ・エンドです。
イメージ(image)
心に思い浮かべる像や情景。
ある物事についていだく全体的な感じ。
心象、形象、印象Weblio辞書
イメージは、聞き手の過去の記憶に紐づいています。
なので、たとえる事柄が相手にとって、親しみのあるもの、体験済みのものでなければなりません。
もうひとつ重要なことがあります。
それは、まず伝える側に鮮明なイメージが必要だ、ということです。
とどのつまり、たとえ話とは、話し手と聞き手の「イメージの共有」なのです。
たとえ話の型
多種多様なたとえ話を分類するとなるとキリがありませんし、おそらく不可能です。
それでも、あえて2つの型を挙げてみます。
- 「アドリブ型」と「作り置き型」
- 「一目瞭然型」と「なぞかけ型」
「アドリブ型」と「作り置き型」
・アドリブ型
「アドリブ」とは、即興で行う演奏や演技のことです。
つまり、会話の流れの中で、直感的にたとえ話を繰り出すというパターン。
多くの人が憧れているのは、このアドリブ型だと思います。
しかし、いきなりアドリブは危険です。
「アドリブはセンスだ」と思われがちですが、僕は違うと思います。
アドリブとは、その人が積み上げてきた数多くの知識や経験から生み出されるものです。
何もないところからは、何も生まれません。
いきなりアドリブに挑戦するような無謀は避け、まずは次の「作り置き型」から始めましょう。
・作り置き型
「作り置き型」は、その名の通り、事前に作って用意しておくというやり方。
つまり、仕込みをしておくということです。
ちなみに、商談やプレゼンを「100%アドリブでやってます」という強者(?)はいないと思います。
まずは実際に使っているセールストークやプレゼントークに、たとえ話を仕込んでみるところからスタートしましょう。
最初は、なかなか思いつかないと思いますが、とにかく脳に汗をかきながら考えることです。
これを続けていると、たとえ話に必要な思考回路が開通し、さらに放射状に延びていきます。
この思考回路の発達した先に、あこがれのアドリブの世界が待っているのです。
ちなみに、アドリブ型、作り置き型と分けましたが、聞き手にとってみればどっちがどっちかはまずわかりません。
僕も、「どうして、あんなにポンポンとたとえ話が浮かぶんですか?」なんてよく言われますが、そのほとんどは過去に作り置いていたものばかりです。
「一目瞭然型」と「なぞかけ型」
次は、「一目瞭然型」と「なぞかけ型」です。
一目瞭然型
その名の通り、聞けばパッとわかるたとえ話。
つまり、説明不要なものです。
一般的(?)なたとえ話は、ほとんどが一目瞭然型です。
なぞかけ型
「なぞかけ」とは、「~とかけて、~ととく。その心は…」というやつです。
つまり、その意味を後で解説するのが、なぞかけ型。
なぞかけ型は、聞き手を一瞬「?」という状態にします。
そして、「どうして?」と、聞き手が前のめりになったところで種を明かします。
そのため、インパクトが強くなるのです。(もちろん、うまくいったときは、です)
たとえ話をパターン化する
さて、ここからは少し具体的に考えてみましょう。
たとえ話とはいっても、「〜みたい」といった軽いものから、ちょっとした物語のような奥の深いものまで、さまざまです。
そこで、いくつかパターンを持っておくと、発想しやすくなります。
決まったパターンがあるわけではありませんが、ここでは4つを取り上げてみます。
簡単なものばかりですが、使いこなすと想像以上の威力を発揮します。
- ことわざを使う
- レベル感を伝える
- 身体の部位にたとえる
- 「あるある」を使う
❶ことわざを使う
ことわざは、それ自体がすでに完璧な「たとえ話」です。
長い歴史を生き延びてきたことわざを使わない手はありません。
「百聞は一見に如かず」「二兎を追う者は一兎をも得ず」「塵も積もれば山となる」など、営業でも使えそうなものがたくさんあります。
ちなみに、僕のボスは、「雉(キジ)も鳴かずば撃たれまい」と言った後に、相手を撃ちまくるという妙な癖がありました。
ことわざは、誰でも簡単に使え、かつストレートに伝わるのでぜひ仕込んでおきましょう。
オリジナリティはありませんが、「教養のある人」に見えるというオマケがもれなくついてきます。(たぶん…)
ちなみに、そのことわざを相手が知らない、といったことも起こりますが、そのときは前述の「なぞかけ型」に持ち込めば大丈夫です。
とはいえ、あまりにもレアなことわざはやめておきましょう。
❷レベル感を伝える
どれくらいのレベルなのか、その実感が伝えにくいときに「たとえ話」を使います。
レベル感には、大きさ、速さ、量といった測れるものから、目に見えない感覚や度合いなどさまざまなものがあります。
営業では、かなりの頻度で使えます。
ちょっと大袈裟なたとえを使うのがコツです。
レベル感を伝える「たとえ話」は難易度も低いので積極的に使うようにしてみましょう。
❸身体の部位にたとえる
複数の事柄の関係性や、役割、位置付けをはっきりさせたいときは、身体の部位を使ってみましょう。
頭脳、手足、感覚器、神経など、身体の部位は、役割や機能、重要度などを説明なしでイメージさせることができます。
同じ発想で考えると、身体以外にも使えるものがたくさんあります。
- 樹木 → 幹・枝葉・根など
- 建物 → 土台・柱・屋根・窓など
- 車 → エンジン・タイヤ・ハンドルなど
❹「あるある」を使う
「あるある」は、相手の経験に紐付けるので、感情に訴えることができます。
たとえを使って、「こんな経験ありませんか?」と問いかけ、それを伝えたい事柄に結び付けるようにしてみましょう。
たとえ話を仕入れる
たとえ話を作るのはむずかしい。
そう感じている人も多いと思います。
何がむずかしいのか、というと、おそらく「たとえる素材」を見つけることではないかと思います。
でも、たとえ話を一から作る必要はまったくありません。
誰かが作ったたとえ話を仕入れたらいいのです。
普段からよくまわりを見てみましょう。
世の中は、たとえ話であふれかえっていることがわかると思います。
見落としているのは、意識していないからです。
普段からアンテナを張っていると、「このたとえはスゴい」とか「これ、使えるやん」といった気づきがあるはずです。
つまり、たとえ話に対する感度が上がってくるのです。
その中から、使いたいと思うたとえ話を、自分なりに加工して使えばいいのです。
そして、それを繰り返していると、たとえ話のネタ帳ができてきます。
たとえ話に必要なマインド
ここまで、たとえ話について考えてきました。
最後に、少し残酷な現実についてお話します。
実は、たとえ話の上手い人は、もともとわかりやすく話せる人なのです。
逆に言うと、普段から話がわかりにくい人は、たとえ話を使っても、やっぱりわかりにくいのです。
これは、どういうことでしょうか。
もちろん、スキルの違いもありますが、それよりも、マインドの問題だと思うのです。
実は、わかりやすく話ができる人というのは、ベクトルが主役である相手に向いています。
彼らは、「どうしたら、もっとわかってもらえるだろうか」を常に考えています。
そこには、「もっとわかって欲しい」というマインドがあります。
このマインドが、たとえ話に命を吹き込んでいる、と僕は思っています。
まとめ
最後まで、お読みいただきありがとうございます。
あくまでも、個人的な感覚ですが、俗にいう話が上手い人、おもしろい人というのは、例外なくたとえ話が上手い、と思います。
たとえ話は、「何をわかって欲しいのか」が明確であること、そして、それを「わかって欲しい」というマインドがあること、この2つが不可欠です。
その上で、脳に汗をかきながら考え続ける。
それによって、たとえ話に必要な思考回路を作っていくことができると思います。
この思考回路さえできれば、意識しなくてもたとえ話が使えるようになるはずです。
※この記事では触れませんでしたが、たとえ話を作るには、物事の本質を見極める力が必要です。それについては、以下の記事を参考にしてください。