営業センスのある人、ない人といった言い方をするときがありますよね。
じゃあ営業センスっていったいなんだ、と問われると、これがなかなか言語化できないわけです。
ちなみにセンスの意味を調べてみると、
物事の微妙な感じをさとる心の動き。微妙な感覚。
とありました。
まさに微妙がゆえに言語化がむずかしいわけですね。
とはいえ、これが営業センスかな、と感じるものは確かに存在します。
そこで、過去にそう感じたものを、あえて言語化してみようと思います。
この記事では、商談における営業センスについて7つ取り上げます。
ちなみに、ここで取り上げるのは、先天的な素質というよりも、経験と試行錯誤の中で磨かれたと思われるものだけにしました。
ぜひ参考にしてみてください。
Contents
絶妙な間合いを取るセンス
間合いには「隔たり」と「頃合い」という意味があります。
つまり、間合いとは言い換えると『距離感のコントロール』のことになります。
もちろん、これは心理的な距離です。
多くの営業マンは、見込客と付かず離れずのほど良い距離を保って商談を進めようとします。
しかし、このセンスある営業マンは、「そんなこと言って大丈夫?」と思うのようなところまで踏み込むことができます。
なぜなら、彼らには見込客が不快に感じないギリギリのラインが見えているからです。
とはいっても、最初からそれが見えているわけではありません。
絶妙な間合いの取り方をしながら、それを感覚的にキャッチしているのです。
このセンスにより、見込客との距離を一挙に縮めることができるのです。
また、ここにユーモアセンスが合体すると、さらに最強になります。
イメージで言うと、お笑いのツッコミみたいな感じです。
実は、このギリギリラインを攻められると、人は快感を感じるのです。
相手の懐に飛び込むのが上手い人というのは、こういうタイプの人のことです。
このセンスは、過去に一線を越えてしまった苦い経験から学んだものだと思います。
いち早く裏口を見つけるセンス
営業において、初回商談は最初にして最大の山場です。
そこで、多くの営業マンは見込客のホットボタンがどこにあるのか、いくつかの仮説を立てて商談に臨みます。
ちなみにホットボタンとは、見込客の興味、関心を引けるポイントのことです。
このボタンを押すことで、警戒心で固められた入口を開けてもらうことができるのです。
ところが、いつもはうまくいくはずのホットボタンが、どれを押しても作動しないことがあります。
こんな場合、多くの営業マンは入口を見つけることができず、その結果ニーズがないと判断してしまいます。
ところが、このセンスのある営業マンは直感的に話題を転換しながら、いち早く裏口を見つけ出すことができるのです。
これができるのは、おそらく視座が高いからです。
高いところから見ると、見えなかった裏口が見えることがあります。
その高い視座から、見込客の意表を突くような話や鋭い質問を投げかけ、隠れていたホットボタンを押すのです。
押し引きの勘所を見抜くセンス
これは別の言い方をすると、駆け引きのセンスとも言えます。
人は押すと逃げようとし、引くと寄ってくるという習性があります。
このセンスのある営業マンは、どこで押すべきか、どこで引くべきかを直感的に見抜くことができます。
そのため、言葉が悪いですがこの習性をうまく利用することができるのです。
それだけでなく、その押し引きのコンビネーションがまた絶妙なのです。
そういう意味では、営業センスの代表格といってもいいかもしれません。
商談でうまく見込客をリードできない人は、この押し引きの勘所がわかっていないのかもしれません。
実際、引き戸を押したり、開き戸を引いたりしている営業マンはたくさんいます。
ここで押さえておきたいことは、このセンスのある営業マンは、見込客に対して高いスタンス(立ち位置)を取っているという点です。
スタンスが高くなければ、思うように押したり引いたりすることはできないのです。
裏を返せば、スタンスが低く腰の引けた営業をしている人は、このセンスを身につけることができないということです。
虫の知らせを察知するセンス
虫の知らせとは、いわゆる「予感」のことです。
ちなみに、コミュニケーションには言語(バーバル)によるものと、非言語(ノンバーバル)によるものがあります。
実は、このセンスのある営業マンは、非言語(ノンバーバル)を読み取る能力がとても高いのです。
具体的に言うと、声のトーンやリズム、目線の動き、姿勢や呼吸などの微妙な変化です。
それを意識しているというよりも、無意識の領域でキャッチしている感じなのです。
なので、普通の営業マンが気づかない「なんかおかしい」「嫌な予感がする」といった虫の知らせを察知できるのです。
このセンスは、常に見込客に対して高い集中力を発揮してきた経験の中で磨かれたものだと思います。
一方、ベクトルが常に自分に向いている営業マンには、虫さんは何のお知らせもしてくれませんのでご注意を!
さりげなく外堀を埋めるセンス
商談が最終局面が近づくにしたがって、見込客は反対や言い訳といったさまざまな抵抗を示してきます。
もちろん、営業マンも応酬話法を駆使してなんとかクロージングに持ち込もうとします。
しかし、実際にはうまく切り返せなかったり、もぐら叩きみたいになったりして玉砕してしまう営業マンもたくさんいます。
ところが、このセンスのある営業マンは大した抵抗を受けることなく成約に持ち込むことができます。
それは商談の早い段階から見込客に気づかれないよう外堀を埋めているからです。
その手法はというと、テストクロージングをかけて言質を取ったり、サブリミナル的な刷り込みをしたりとさまざまです。
言ってみれば未然防止なのですが、そのさりげなさがまさにセンスなのです。
このセンスも、間違いなく経験と学習の中で作られたものだと思います。
見えないところを見るセンス
通常、初回面談から成約に至るまでに複数回の商談があります。
ここで言う見えないところとは、この商談と商談の間の時間のことを指します。
実は、いろいろな問題はこの見えないところで起ります。
たとえば、家族の反対にあう、ネットで調べられる、現営業担当に説得される、などです。
しかし、そこに営業マンはいないため対処できません。
後日会った見込客がすっかり冷めていたという経験は誰にでもあるはずです。
ところが、このセンスのある営業マンはそれを予見できるのです。
とはいっても、直感だけを頼りにしているわけではありません。
見込客の言葉を鵜吞みにせず、常に最悪の事態を想定しながら状況を観察しているから、それを予見できるのです。
このセンスは、過去の苦い経験で積み上げてきたデータベースが元になっています。
刺さる言葉を繰り出すセンス
営業とは、基本的に言葉のやり取りです。
営業マンは、言葉を通していろいろなことを伝えようとします。
しかし、それが伝わったからといって、買ってもらえるとは限りません。
なぜなら、人は感情で買うからです。
このセンスのある営業マンは、単に伝わる言葉ではなく、刺さる言葉で見込客の感情を刺激することができるのです。
たとえば、「これがいい方法です」と、「これが賢い方法です」とでは、受け手の感じ方は微妙に変わります。
あるいは、「頑張れよ」と励まされるのと、「負けるなよ」と励まされるのとでは、これまたスイッチの入り方が変わります。
ちょっとしたことに思うかもしれませんが、刺さったときには一撃でその気させるだけの威力があります。
このように、同じ意味を伝えるにしても、どんな言葉を使うかは非常に重要なのです。
このセンスは、普段から言葉に対する感度を磨いておかなければ身に付きません。
そして、刺さると感じる言葉に出会ったら、それをストックしておくことが必要です。
センスがある人の落とし穴
ここまで、営業センスだと思うものを7つ挙げてみました。
最後にちょっと意外なお話をしておこうと思います。
過去に数多くの営業を見てきましたが、営業センスはあるのに売れていないという人も結構多いのです。
その理由は2つあります。
- サボり癖がある
- 学ぶ姿勢に欠ける
センスのある人は、「その気になればいつでも売れる」と思っているため、なかなか本気のスイッチが入りません。
また、いまさら学ぶことなんてない、という勘違いもしがちです。
つまり、センスがあるがゆえに仕事をなめてしまうのです。
この傾向は、もともとセンスを持っていた人によく見られます。
結局、センスよりも大切なのは、真面目にちゃんと仕事をすることなのです。
ここはとても興味深いところだと思います。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
ところで、センスという言葉は、どこか免罪符のようなイメージがありますよね。
「センスだよね」と言われると「じゃあ仕方ないね」みたいな感じです。
でも、センスには持って生まれた先天的なものもありますが、経験と学習によって身につけることができる後天的なものもあります。
これは個人的な見解ですが、営業センスに関して言うと、後天的なものが圧倒的に多いように思います。
つまり、その気になれば営業センスは必ず身につけることができるのです。
どれだけ知識や技術を学んでも、センスがなければそれを活かすことはできません。
なので、「センスだから」と言い訳をせず、センスだからこそ努力して身につけて欲しいなと思います。