営業スキル

質問の答え方でわかる、できる営業、できない営業

仕事のできる営業マンに任せたい…

ほとんどの人は、そう考えています。

見込客は、その判断をするために、営業マンをいろいろな視点から見て採点しています。

実は、その中に、致命的な減点をされてしまう、意外なポイントがあります。

それは、「質問に対する答え方」です。

営業に限らず、仕事ができる、できないは、質問の答え方にはっきりと現れます。

もしかすると、あなたも知らない間に、イケてない営業マンの烙印を押されているかもしれません。

ワイドショーで見た Q&A

先日、TVのワイドショーで見た一場面です。(※2020年3月ごろのお話です)

話題は、新型コロナウィルス。

ちょうど、市中感染の事例が明らかになったところでした。

司会者が、感染症の専門家に質問をしました。

司会者
司会者
先生は、いつ頃、終息するとお考えですか?
専門家の先生
専門家の先生
そうですね、今、一番の問題は検査体制で… という懸念があります。それに… という問題があるんですね
司会者
司会者
要は、まったく分からないってことですね

残念なことに、先生のお話には、「いつ終息するのか」に関する答えは、最後まで出てきませんでした。

つまり、まったく質問の答えにはなっていなかったのです。

こういったことは、営業の現場でも頻繁に起こっています。

「質問には、ちゃんと答えなさい!」という、小学生が言われているようなことが、実は意外にむずかしいのです。

「仕事ができる人」と思われる質問の答え方

質問に的確に答える人は「頭が切れる」とか「頭の回転が早い」とか言われます。

つまり、見込客から「この人は、仕事ができる」と、信頼されるのです。

逆に、ズレた答えや、曖昧な答えしかできない人は、見込客に不信感を抱かせてしまいます。

ところで、仕事ができる営業マンは、質問に対してどのように答えているのでしょうか。

実は、次の3つのポイントを押さえて質問に答えています。

  • まず結論から答える
  • できるだけシンプルに答える
  • 事実を元に正確に回答する

まず結論から答える

メンタルモデル

ビジネスでは、まず結論ありきです。

見込客から質問を受けたら、まず最初に、聞かれたことだけにシンプルに答えます。

余計な言葉や、説明は必要ありません。

サッカーでいうと、ボールをキープしたり、ドリブルしたりせずに、ワンタッチでパスを出すイメージです。(余計わからん!)

実は、人が質問をするときには、「こういう答え方をしてくれるはずだ」と、脳がスタンバイして待っているのです。

サッカーでいうと、ここにパスが来るはずだ、と、すでにそこに向かって走っている状態です。

先ほどのワイドショーのケースでは、終息する時期に関する回答があるはずだ、と視聴者の脳はイメージしているのです。

これをメンタルモデルといいます。

【メンタルモデル】

メンタルモデル(英 mental model)とは、頭の中にある「ああなったらこうなる」といった「行動のイメージ」を表現したものである。

ーwikipediaー

 

もし、メンタルモデルと相容れない答え方をしてしまうと、脳が違和感や不快感を感じてしまうのです。

その結果、当然、イライラしてきます。

見込客
見込客
いつお返事いただけるのですか?
イケてない営業
イケてない営業
そうですね、月末で混み合っていますので、ちょっとお時間がかかるかもしれません
見込客
見込客
で、いつになるんですか?

これは、都合の悪いことを聞かれたときにやってしまいがちです。

相手が聞きたいことにストレートに答えるようにしましょう。

同様に、質問に対して、「待ってました」とばかりに、質問とは無関係な話をしてしまう人がいますが、これも、間違いなく相手のメンタルモデルを崩壊させます。

後輩
後輩
先輩、事情書の件名はどうしたらいいですか?
先輩
先輩
はあ?お前、事情書の意味わかってる?
そもそもお前はな…(中略)やねん。わかったか。
後輩
後輩
(件名…)

質問の属性を意識する

質問に的確に答えるためには、なにを聞かれているのかを、瞬時に把握しなければなりません。

まず質問の属性には、次の2種類あることを理解しておきましょう。

  • YES か NO を問う質問
  • 5W1H を問う質問

YES か NOを問う質問には、当然、YESか、NOではっきりと答える必要があります。
わからない場合は、「わかりません」と答えます。

5W1Hを問う質問は、見込客の質問の中にある「いつ?」「どこで?」「誰が?」「なにを?」「なぜ?」「どうやって?」というキーワードをキャッチして、それに具体的に答える必要があります。

できるだけシンプルに答える

見込客の質問には、短く、シンプルな言葉を使って答えることです。

話は、読点「、」ではなく、できるだけ句点「。」で切るようにします。

話が長い人は、とにかく読点「、」で話をつなぐ傾向があります。

本人は、流暢に話してるつもりですが、ひたすらしやべり続ける幼い子供と一緒です。

ぼくなあ、きのうなあ、じろうくんとなあ、けんかしてなあ、ほんでなあ、せんせいがなあ、あかんっていわはったからなあ…

質問に答えるときは、できるだけ短いセンテンスで答えるように意識しましょう。

次に大切なのは、誰でも間違いなく理解できる、やさしい言葉を使うことです。

専門用語や、カタカナ用語は、使うのを避けた方が無難です。

コンセンサス、コンセプト、エビデンスなど、カッコいいと思って多用する営業マンがいますが、逆に中身のない薄っぺらな営業マンに見られるのがオチです。

事実を元に正確に回答する

そもそも、なぜ見込客は質問をするのでしょう。

それは、不安だからです。

つまり、営業マンは、質問に答えることによって、安心を提供しなければならないのです。

ところが、見込客をさらに不安にするような答え方をする営業マンがいます。

見込客
見込客
3年保障はつけておいた方がいいのかな?
イケてない営業
イケてない営業
そうですね、つけておけば安心ですけど、お客様によってまちまちですね

自分の考えは、曖昧にせずはっきりと伝えましょう。できればその根拠も示します。

デキる営業
デキる営業
はい。その方が安心です。実際、私のお客様の場合、7割以上の方がつけていらっしゃいます

また、質問にはできるだけ正確に、わかりやすく答えるようにしましょう。

見込客
見込客
見積書は、いつ頃できそうですか?
イケてない営業
イケてない営業
そうですね、たぶん今週中にはできると思います

テキトーな推測ではなく、事実を元にして正確に答えると、相手は安心します。

デキる営業
デキる営業
金曜日の午前中にお渡しする段取りで、今、本社で最終チェックをしています

見込客は、不安を解消するために質問をしているのだ、ということ忘れないようにしましょう。

質問の意図を読み取る

質問の裏ある真意を確認する見込客は、不安なことを、直接ではなく、間接的に質問してくることがあります。

僕が外資系保険会社に入社したころ、商談中に「社員は何人いるんですか?」とか、「本社はどこにあるんですか?」といった質問をよくされました。

しかし、見込客が本当に聞きたかったのは「おたくの会社、大丈夫なん?」ってことです。

それは、当時はまったく無名の小さな保険会社だったからです。

このように、質問に答えるときには、その裏にある真意を読み取ることが大切です。

しかし、読み取るとはいっても、それが正しいのか、わからないときもあります。

そんなときは、質問して確認を取ります。

実は、質問の真意がわかる魔法のトークがあります。それは、

なにかご心配ですか?

質問の裏にある真意を知りたいときに、抜群の威力を発揮してくれます。

見込客
見込客
社員は何人くらいいるんですか?
デキる営業
デキる営業
1200人です。なにかご心配ですか?
見込客
見込客
いえ、聞いたことない会社だったんで

 

これ以外にも「と、いいますと?」「どういうことでしょうか?」などが使えます。

見込客
見込客
このオプションは外せるんですか?
デキる営業
デキる営業
と、いいますと?
見込客
見込客
いや、ちょっと予算が厳しいかなと思って

もし、「あれ?」と思うような質問をされたときには、積極的に使ってみましょう。

質問にうまく答えられない理由

質問にちゃんと答えられない理由は2つあります。

  • 確信を持って答える自信がない
  • ベクトルが自分に向いている

確信を持って答える自信がない

質問にちゃんと答えられない最大の理由は、ズバリ、自信がないことです。

それを克服するために、2つのポイントを挙げてみます。

  • 絶対的な知識を習得する
  • 質問に対する準備を怠らない

絶対的な知識を習得する

確信を持って答えられないのは、絶対的な知識を持っていないからです。

営業では、商品知識、業界知識、業務知識、さらに業種によっては税制、法律など幅広い知識が必要になります。

マネージャーの経験から言わせてもらうと、知識と業績には、はっきりと相関関係があります。

トップ営業マンになると、業務知識であっても、本社の事務方レベルの知識を持っています。

ところで、なぜ絶対的な知識が身につかないのでしょう。

それは、自分で調べないからです。

多くの営業マンは、わからないことがあると、誰かに聞いて「あ、そういうことね」で、終わりにしています。

一方、トップクラスの営業マンは、まず自分で徹底的に調べます。

自分で調べると、「じゃあ、こんなケースは?」とか「他の方法は?」など、いろいろな疑問が出てきます。

それを、自分で調べることによって、さらに知識が増幅していくのです。

とにかく、納得できるまで、自分で調べる習慣を身につけるようにしましょう。

質問に対する準備を怠らない

商談に臨めば、かならず何か質問を受けます。

その中で、何度か質問されることを分析すれば、見込客が理解しにくいこと、疑問に思うこと、などのパターンが見えてきます。

そうした質問に事前に備えて、的確に答えらるようにしておくことが大切です。

優秀な営業マンは、商談で出てきた質問や、自分でもよく理解できていなかったことなどは、そのあと徹底的に調べます。

そうしたことを積み重ねることで、質問に答えるための引き出しを増やしているのです。

彼らが、見込客の信頼を勝ち得ているのには、そうした理由があるのです。

ベクトルが自分に向いている

ベクトルが自分に向いているというのは、ホスピタリティが足りないということです。

自分の成績や、都合ばかり考えていると、見込客の質問の裏にある不安や意図を汲み取ることができません。

営業マンの地図と、見込客の持っている地図は違います。

多くの営業マンは、自分の地図だけを見て話をしようとします。

一方で、優秀な営業マンは、相手がどんな地図を持っているのかを、常に考えているのです。

ベクトルが自分に向いていると、自信がないときに、責任を回避しようとします。

一方で、わからない、知らない、ということを素直に認めようとしません。

その結果、曖昧な返答をしたり、はぐらかしたりするのです。

残念ながら、こうした営業マンからは社内、社外を問わず、人が離れていきます。

営業では、技術や知識も重要ですが、やはり最後は人間性だと思います。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。

営業では、伝える、聞く、質問する、などの技術の習得は、誰もが重要視しています。

一方、質問に対する答え方の重要性に気づいている人は、残念ながらあまりいません。

実際、営業に関する書籍や、研修などでも、ほとんど取り上げられることはありません。

しかし、見込客は、営業マンが質問にどのように答えたかを見ています。
それによって、信頼できる営業マンかどうかを判断しているのは間違いがありません。

裏を返せば、そこに見込客から信頼を得る、最大のポイントがあるということです。

  • まず結論から答える
  • できるだけシンプルに答える
  • 事実ベースで正確に回答する
  • 質問の裏にある真意を確認する
  • 絶対的な知識を習得する
  • 質問に対する準備を怠らない

効果的な質問の仕方については、以下の記事を参照ください。

効果的な質問ができる、たった2つのポイント

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